ボリビアとイランの軍事協定:ヒズボラの南米への玄関口

ヒズボラとイラン革命防衛隊の玄関

ボリビアという国が日本で話題になることは先ずない。強いてあげればウユニ塩湖とユイバサ塩湖を結ぶ地域は世界でリチウムの埋蔵量では最大とされているということくらいであろうか。因みに、リチウムはボリビア、チリ、アルゼンチンの3か国でアンデス山脈で国境が結ばれた地帯が世界の埋蔵量では55%を占めるとされている。またクーデター発生率の高い国で、つい最近もクーデター未遂があった。

このボリビアが実は昨年からイランと軍事協定を結んでおり、イランのテロ組織・ヒズボラの南米への入口になっている。またイラン革命防衛隊も駐留している。

スペイン語を一切喋らないボリビア国籍者

イランは現在ラテンアメリカで勢力の拡大に努めている。それもベネズエラでチャベス大統領が登場した2005年頃から両国の関係が活発となった。

当時のイランは核爆弾を生産しようとしているということで欧米から孤立させられていた。その孤立から脱皮すべく、チャベス氏が反米主義を掲げて登場したのに合致している。

ボリビアはベネズエラ、キューバ、ニカラグアに次いで、イランにとって戦略的に重要な国となっている。しかもボリビアでは、イラン人やヒズボラの為に、ボリビア人として偽造パスポートも発給しているというのは良く知らたことである。したがってラテンアメリカでテロ活動をするために、ベネズエラかボリビアに先ず入国して、パスポートを発給してもらというのが常套手段となっている。

中東人の人相をし、スペイン語を一切喋らない人物でありながら、パスポートはボリビアかベネズエラのそれを所有しているというわけだ。

ヒズボラの敵、アルゼンチン

一方で、イランがボリビア政府に教授しているのは、野党を上手くコントロールする方法、国境地帯の軍事化、民兵の武装化などである。その為にイランから革命防衛隊の軍人を派遣してボリビアの軍事を強化し、ドローンを提供して隣国へのテロリスタの侵入を容易にさせ、また逆に他国からの干渉を阻止できるようにしている。

この面で、ボリビアがイランの影響下に入ったことで最も警戒している国が隣国のアルゼンチンである。アルゼンチンには20万人のユダヤ人が在住しており、1994年にブエノスアイレスでアルゼンチン・イスラエル相互協会がテロリストによって爆破され85名が死亡し、200名以上が負傷するという事件があった。この時の首班がイラン人であった。当時の実行犯の内の4名は現在もアルゼンチン、パラグアイ、ブラジルの3か国の国境が重なる地域に在住している。この地域はヒズボラの巣窟となっている。

アルゼンチンは昨年12月に新政権が誕生してそれまでのイランとも比較的親交のあったキルチネール派政権から欧米諸国やイスラエルとの関係強化に方向転換している。その意味で、ボリビアからヒズボラのテロリスタがボリビアの偽造パスポートを使ってアルゼンチンに入国してテロ活動を行うことが容易になっており、アルゼンチン政府はそれを阻止すべく警戒を強化している。