今回の都知事選、読者に判断材料を提供しようと考えています。筆者の専門であるEBPMの観点から見ていきます。
都政改革本部の公表資料「2020改革~これまでの取組成果~」からその課題を見出し、実績を示されていますが、2024年度の改革成果は明らかになってません。いろいろやってはいるけど、全体的に結局何だったのだろうか。都民にはわかりづらいものです。政治家さんがどうしても自分の業績をよく見せたいと思って行動します。
行動特性として、
- 成功しているところだけを限定して数字を見せる
- 指標の数字の目標達成度はなるだけ避ける(そもそもできそうなものだけを目標にしていた上に!)
という傾向があります。
具体的にいうと、
- できたことをアピールする
- 7つの「ゼロ」については、なんとなくごまかす
という感じです。
よく見せる行動、政治家さんも人の子なので、仕方ないのかもしれません。
しかし、最近は「EBPM」(Evidenced Based Policy Making)が言われています。根拠に基づく政策形成ということです。なので、社会はどうなっているか?政策の影響がどれくらいか?政策がうまくいっているのか?多面的に考える必要があります。
何回かに分けて、客観的に見ていきましょう。
東京の経済的地位
圧倒的な経済的地位を誇る東京都。東京が日本を支えるのか? 東京だけが繫栄し地方はおいていかれるのか? どちらかは、ゆくゆくは議論していきたいが、とりあえず現状を見てみよう。
面積では日本の1%弱にもかかわらず、人口、国際総生産、就業者数・・・その占有比率は圧倒的な数字である。
都内総生産はあまりかわっていない
小池さんが都知事に就任してからこの8年を見てみよう。令和3年度の都内総生産(名目)は、前年度の109兆4千億円から113兆7千億円。世界各国のGDPと比較しても第18位だそう。東京都の資料によると、オランダ、トルコと同じ程度である。
ただし、年次比較をしてみると、コロナ期を除いても、あまりかわらないというのが現状である。令和3年が113.7兆円と平成29年の113.4兆円から微増程度にとどまっている。
次に、都内総生産(名目)が全国に占める割合は、20.7%ということなので、内訳をみてみましょう。特化係数という指標を用いると、情報通信業や金融・保険業や卸売・小売業がけん引していることがわかります。
都市の実力
世界の都市ランキングを見てみましょう。
総合ランキングは相変わらずの世界3位です。しかし、詳細を見ていくと「トップ3」と言えない部分も見えてくるのです。
分野別にみると、経済は10位、研究・開発が4位、文化・交流が5位、居住が3位、交通・アクセスが8位である。
そう経済は10位なのです。
森記念財団都市政策研究所「世界の都市総合力ランキング」によると、
昨年から大きく順位を落とした都市の1つが10位の東京である。弱みである「GDP成長率」に加え、「ワークプレイス充実度」や「世界トップ500企業」などの強みである指標においてもスコアを落とす結果となった。
ということらしいのです。
世界の都市として、2023年11月のレポートではあるが、経済力としては相対的に地位を落としているのが現状です。
結論
国内的には結果的に、1人勝ちの東京都といって過言ではありません。高層マンションが立ち並び、マンション価格は高騰。政治経済文化の中心、政治関係・官庁・司法・メディア・大企業がほとんど東京に位置し、グローバル企業も世界から集まってきて、それなりに人も集まります。
しかし、経済データからは世界的に圧倒的な競争力は見いだせませんでした。
東京の経済的には「現状維持」が現実です。東京のみが繁栄しているように見えるのですが、いろいろな面で限界があるのではないかと思います。
今後も政策評価や公共政策の専門家として、しっかりと読者に政治の正しい見方を提供をしたいと思っています。