明日のアメリカ建国記念日を横目で見ながら「この国はどこに向かうのだろう」と思うと良きアメリカと共に歩んだあの頃が懐かしく、今のアメリカはやや遠い感じがしているのは私だけでしょうか?
11月に迫る大統領選挙において民主党側は先日の不甲斐ないバイデン氏の討論を受け、世論はバイデン交代論で湧きあがりました。本人は打ち消し、「過密な外交日程だったから」(ブルームバーグ)と言い逃れているのは頂けません。仮に本当に代替論があるなら隠密裏にやっているはずで完全に準備ができたところでそれが突如アナウンスされるような気もしますが極めて難しいところです。日程的にはもうぎりぎりで今すぐにもそれを発表しないとアウトであります。
ただ、誰が民主党候補になったにせよ、トランプ氏の追い風は確かな気がします。選挙資金においてもトランプ氏が4-6月期に集めたのが3億3100万ドル、一方のバイデン氏は2億6400万ドルで差をつけられました。更に大統領の免責特権がアメリカ最高裁で認められたことでトランプ氏には追い風となり、口止め料裁判において有罪とされたその量刑判断を最大9月18日まで延期すると発表しました。この件は既に量刑だけの問題になっていて罰金刑程度になると予想されるのでトランプ氏はうまくかわしていくだろうとみています。
選挙が進むにつれ世論調査などで状況は刻々と見えてくるのですが、いつもなら割と接戦で最後にどちらかが突き放すケースもある中、今回はバイデン氏がそのまま走るなら勝負あったり、とみています。私が非現実的ながらケネディ氏が民主党に戻ってくれば面白い対決になると予想したのはケネディ氏はアメリカでは珍しい第三極ながら一定の支持率を得ているからです。18-34歳層では22%となっていてトランプ、バイデン氏双方がそれぞれ30%台前半であることを考えると独り相撲にしては出来過ぎともいえる状況になっています。
よって私はいまだにどんでん返しの可能性はあるとみていますが、現実的にはトランプ氏のアメリカが帰ってくるのが本命だろうと考えるのが北米でビジネスをする者としての判断です。その場合、何が一番重くのしかかるか、というと経済政策と外交であります。
経済政策については貿易関税を一律10%、中国製に限り60%をシナリオに掲げています。またUSMCAについて大統領になったのち、見直す可能性があると考えています。特にメキシコに中国企業の投資が集中しており、USMCAの特例を活用するケースが多々生じており、中国製電気自動車も虎視眈々とアメリカ市場参入を狙っていることからこれをシャットアウトすべき厳しく制度見直しをするとみています。
これで困るのはアメリカへの物品が10%から60%の輸入関税でコスト増となるため、消費者はその値上がり分を甘受しなくてはならないのです。これがアメリカにスタグフレーション的なインフレを持ち込むことになり、せっかく下がり始めているアメリカの消費者物価水準がポンと跳ね上がってしまうのです。そのため、ゴールドマンサックスからはFRBが1.5%から2.0%程度を5回の利上げで対応するだろうという予想すら出ています。そうなるとハイテク株を中心に株式市場にはネガティブインパクトになります。一方、トランプ氏はパウエル議長はクビにして新議長には利下げをさせる議長を選ぶとしています。こうなると私はアメリカ経済がどうなるのか予想すらできないのです。
これに似たケースはトルコのエルドアン大統領が物価上昇率が80%を超える中、利下げをさせた異様な経済政策と同じことになります。こうなると通貨の評価引き下げしかなく、USドルの価値が1-2割下がるとみるのが正しくなります。これは米ドル建て表示のNYマーカンタイル原油や金、ビットコイン価格が跳ね上がるシナリオになります。当然ながら国家は疲弊するでしょう。
一方、外交については孤立主義と二国間協定主義を再び持ち込むはずです。その中で最注目点はウクライナ政策ですが、トランプ氏自身は明白には言わないですが、たぶん、ロシアとウクライナを無理やりディールをさせるのだろうと思います。一定条件下の東部割譲はあり得るシナリオになります。
アメリカとロシアは今は冷たい関係ですが、この100年で見ると必ずしも悪い時期ばかりではありません。世間を驚かせたのが1933年のアメリカとソ連の国交樹立でありますが、時の大統領ルーズベルトはアメリカとソ連が手を結ぶことでドイツと日本に対抗しようとする動きでした。ある部分に於いてルーズベルトとトランプ氏は共通点がないとも言えず、そうなれば外交については世界分断を促進する結果を生むでしょう。
日米安保についてもトランプ氏は極めて淡白になるとみています。アメリカ人はもともと戦争は嫌いなのです。なるべくなら自国と関係のない国への関与は下げる、このスタンスはずっと変わらずで政治的に他国にちょっかいを出すメリットがある場合のみそれをしてきました。トランプ氏は欧州の問題についても例えばNATOの負担金に関して「大西洋の向こう側」と述べています。これは重要な意味を成し、中国台湾問題は太平洋の向こうの話、ということになりかねません。
またトランプの内政、外交の手腕は既に十分研究されているはずで手の内が読まれていることも含め、トランプ氏の第一期目のようなハチャメチャぶりは期待できないとみたほうがよさそうです。
建国記念日に見る隣国アメリカは何処に向かうのでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年7月4日の記事より転載させていただきました。