金融マーケットの暴落で味わう「人生の縮図」

東京証券取引所 Wikipediaより

株式市場をはじめとする金融マーケットの混乱はそろそろ小休止となりそうです。まだ油断はできませんが、マーケットは少しずつ落ち着きを取り戻しているように見えます。

今回の急激な変動の中で個人投資家が経験したことは、「人生の縮図」のように様々な教訓を提供してくれます。

例えば、人生は金融マーケットと同じように、同じことをしてもタイミングによってその結果は大きく異なります。株を買うタイミングによって、投資収益が大きく変わるように、「何をするか」よりも「いつするか」が人生を決めるのです。

平時にお金を貸すのと資金繰り倒産しそうな時にお金を貸すのでは、その価値は随分違います。人間関係でもビジネスでも、相手が困っている時に手を差し伸べてこそ、その価値は高まるのです。

また、人と同じことをしていても、良い結果が得られないことも再認識できました。

今回の株価急落で大きく儲けたのは、株式のプット(売る権利)を買っていた人たちでした。

日経平均オプション(8月物)では権利行使価格3万円のものが前々日の2円から16円になり、昨日は1300円と前日から81倍に急騰したそうです。株価が下がると予想する人がほとんどおらず、予想外の急落でプットの買い需要が急激に増加したのです。

人生においても大きな成功をなし遂げる人は、常識に囚われず人がやらないことにリスクを取ってチャレンジする人です。

そして何より大切な教訓は、嵐の渦中にいるとこの世の終わりのような恐怖感を感じますが、嵐が過ぎて後から振り返ってみると大したことが無かったかのように客観視できるようになるということです。

人生において「苦しくてもう耐えられない」「死んだ方がマシだ」と思うような絶望的な状況に陥ったことがある人もいるかもしれません。私もそんな経験者の1人ですが、当時は恐怖や絶望に支配されていた感情も、今となってはウソのように消えてしまっています。

想定外の様々なことがあっても、自分が今も生きているということは、それらのトラブルや事件を何とか乗り越えてきたということでもあるのです。

マーケットの急変動と同じように人生において極限の危機的な状況になると、その人の人間としての器が見えてきます。どんな環境に陥ったとしても、心落ち着いて冷静に対応できる。そんな人になりたいものです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年8月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。