関税引き上げで変わるEUのEV市場:中国EVメーカーの現地生産拡大

EUは中国からのEV輸入車に高関税の適用を決めた

中国製のEVへのヨーロッパでの輸入関税率が上がることを受けて、中国のEVメーカーは現地のヨーロッパで生産することに方向転換している。これまでだと、中国製EVはEU市場で最高37%安価な価格で販売されているという。

そもそもEUが中国のEV生産に伴う中国政府からの支援について調査を始たのが昨年10月のことであった。それによって、中国のEVメーカーは政府から補助融資、財務上の融通、工場建設に伴い安価の土地の提供などが判明している。

EUは今年7月から中国製のEVに対して、新たな輸入関税率を明らかにした。それによると、中国のEV輸入車に一律の輸入関税を適用するのではなく、メーカーによって関税率が異なっている。

例えば、BDY社のEVに対して17.4%、Geelyには20%、SAICには38.1%の輸入関税率が適用されるという。それ以外の中国他社のEVに対しては25%。これまでの一律10%の関税率と比較してEUでの販売価格に顕著な値上げとなる。

また、EUのメーカーが中国で生産して逆輸入するEVに対しては22%の輸入税率の適用とされている。ルノー、BMW、テスラなどが中国からの逆輸入車として対象になる。この3社の中国からの逆輸入車は現状では中国からの全輸入車の半分近くを占めている。

しかし、この一連の関税率について、EU加盟国の間で異なった見解がある。ドイツやスウェーデンは高い税率に反対し、一方フランス、イタリア、スペインなどはそれに賛成している。

 中国は本格的にEU市場での生産を強化して行く方針

いずれにせよ、中国は今後EU圏内での生産にシフトして行くことは明らかとなっている。その第一弾がスペインの日産工場の跡地を利用して中国のChery社が生産を開始する。皮肉なもので、1970年代に日本車がヨーロッパで生産開始となり、それに韓国車が続いた。そして、これから中国車がヨーロッパで「Made in Europe」として生産が盛んになる。

日産は1979年にバルセロナで生産を開始したが、提携先のルノーとの関係から2021年に撤退を余儀なくさせられた。その跡地に中国のChery社が進出するということだ。

Cheryは日産が進出した時に関係をもったスペインのEBROも参加して年間で15万台の生産を目指すとしている。その為の最初の投資資金は5億ユーロ。そのあと12億5000ユーロを投資するとしている。従業員は先ず1000名からスタート。2029年までに年間30万台の生産を目標にしている。

 スペインがEU資金をChery社に提供しようとしていることにEUは不満

これに対して、EU委員会が不満に感じているのは、スペイン政府がこの進出に伴ってEU資金をChery社に提供しようとしている姿勢だ。

Chery社以外の中国他社の進出を見ると以下のようになっている。

  • Geely:ベルギーでモデルEX30やEX90を生産するとしている。
  • BYD:2026年までにハンガリーで生産開始。当初、年間15万台、そのあと30万台まで生産量を増加させるとしている。
  • Dong Feng Motor:イタリア政府と現在交渉中で年間10万台を目標にしている。
  • DR:イタリアのブランド車であるが、中国で部品を生産して半製品でイタリアに輸入している。

以上が、現在明らかされている中国のEVのEU市場におけるプランだ。