上手にリスクを取る3つのコツ

黒坂岳央です。

時代の変化が速い現代、「リスクを取らないリスク」は誰の目にも明らかになってきた。

一昔前はやって失敗する人がいたら「欲張りでバカなやつだ。強欲を出さず、長いものには巻かれろ」と言われてしまっていた。しかし、今やリスクを取らない人はどれだけ大船にいてもその船に乗ったまま沈んでいく運命が待っている。なぜならリスクを取らないということは変化を拒むことと同義であり、変化できないものは必ず淘汰される運命にあるからだ。

リスクを取る、ということについての最大の誤解は「頭の良さが必要」と考えられていることだ。むしろ、ベテランやキャリア豊富な人ほど、旧態依然のやり方に固執して「いかに変化せずに済むか?」ということに頭を使っているフシすらある。

リスクテイクは技術であり、知能指数ではない。コツをシェアしたい。

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最初に小さく始める

リスクを取るのが下手な人は「やるなら100点を目指して抜本改革だ!」と考えがちだが、これは間違いだ。変化が速い現代に100点満点は存在しない。それを目指すと永遠に始められない。だからbestではなくbetterを目指す意識が必要なのである。

そして一気に何もかも変えるのではなく、小さくテストするのだ。悪い例は国の政策や税制改正である。「ドカンと大改革で日本中が大混乱!」ということをずっと繰り返している。たとえば有料レジ袋やインボイス制度も「愚策」として多くの問題が指摘され、特にインボイスについては修正に次ぐ修正によって、もはや現場の税務調査官や税理士でさえ何が正しいかよくわからず混乱状態になっている。完成度の低い政策の結果、日本全国の貴重な労働リソースを付加価値のないムダな作業に使わせてしまっている。

政策レベルのプロジェクトとなれば、確かにテスト運用するのは現実的に難しいかもしれない。だが、ビジネスならテスト運用は可能なはずだ。たとえば新しいシステムの導入については、ある日いきなりドカンと変更するのではなく、しばらく並行稼働して改善案を拾いつつ、完成度を十分高めてから猶予期間を設けて変更する。いきなり現行運用を完全に捨てて、まるっきり新しく変化しようとするから抵抗勢力ができる。何でも最初は小さく始めれば良いのだ。

朝令暮改の発想を持つ

リスクを取る、というのは何かしら新しい施策に可能性を感じているからだ。しかし、誰しも見積もりを誤るということをする。だからリスクを取ってみて目論見と違ってダメなら、素早く撤退するという戦略を事前に持っておくべきだ。

「コストを掛けた分、ムダにしたくない!」と前進し続けると余計に損失が拡大してしまう。サンクコストといってムダを嫌い、自分の行動を正当化する思考によるものだ。

朝令暮改の発想を持ち、「この段階までやってみて思うような結果がなければ撤退」と考えるべきだ。言い方を変えると損切りである。損切りができない人は「この施策はこういう結果があるはずだ」という仮説を持っていないまま始めるから泥沼にハマる。逆に仮説を持っていれば、仮説通りにいかない時にさっさと撤退することができるので、次の可能性のある施策に挑戦する。これを繰り返す内にとうとうあたりを引くことができるのだ。

最悪のシナリオを想定する

新しいことをする時は誰しも夢見がちで良いことばかり考えてしまう。だが世の中に完璧はない。必ず想定外のことや悪い面もある。そこで提案したいのが「最悪のシナリオを想定しておく」ということだ。

自分の場合、人前で話す仕事を依頼される際、なれないうちはあれこれ不安要素が非常に多かった。ちゃんと上手に話せるか?質疑応答で答えられるか?セリフが飛んでしまわないか?数え切れないほどいろんな不安が押し寄せてきたが、最悪のシナリオは「恥をかく」ということである。

でも恥をかくのが最悪のシナリオなら大して失うものはない。対して、メリットの方が圧倒的に大きい。しかも、練習をたくさんすれば恥をかく可能性を極限まで低くすることができる。そう考えると気が楽になった。最悪を想定しておくと特攻する覚悟が決まるのだ。

リスクは「慣れ」がほとんどだ。新しい挑戦でも小さく始め、いざ失敗したら素早く損切りをして、最悪を想定しておけば何も怖くはない。逆にそれらを一切考えず白黒の二元思考に陥ると「不安なのでこれまでと同じやり方でいいや」となってしまう。慣れておけば怖いことはなにもないのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。