あるNPOの総会に出席している時でした。過年度の決算と次年度の予算承認があったのですが、ふと目に留まったのが過年度の利息収入。現金資産4億円超に対して利息が7000円強。私は質問させていただきました。「これは間違いか?それとも仮に事実だとしたらあまりにも投資に対する感性が足りないのではないか」と。たぶん、虚を突かれたのでしょう。壇上の担当者は「監査人が承認しているので」と答えます。そこで私は「では監査人に伺います。本当にあっていますか?」と。
私は善人ですので200人以上いる前でそれ以上追求しませんでした。その代わり、会議が終わると真っすぐに監査人のところに向かい、直接話をしました。「これ、間違いですよね?」と。理由は想像した通りで経理上の表現のエラー(利息の未収収益計上を怠っていたこと)なのですがいずれにせよ少額の話です。私の本来言いたいことは「もう少し、投資の感性を持ちましょうよ」ということです。
ではなぜ、投資ができないのでしょうか?これは至極簡単な答えです。NPOゆえに誰も頑張るつもりもないし、リスクも取りたくないのです。もしも自分のお金なら頑張って運用しようとするでしょう。しかし、NPOゆえにお金を扱う担当者もプロじゃないのです。経理処理だって現金主義でやっているとはいえ、期末だけは未収未払いを計上するべきで、経理の基本的処理すらできないのです。
家計のお金の場合、かつてリスクをとるのを嫌ったのは家庭の大蔵大臣である奥様の場合が多かったかと思います。「私は10円でも安いものを買うために自転車で駆けずり回っているのに何であなた、株で〇万円も損しているのよ。もったいない」と。株は売らなければ実現損にならないのですが、購入金額より下回っていると大蔵大臣はカッカするのであります。これが逆で〇万円儲かっていると「あなた、今日はビール2本飲んでいいわよ」になるのですが。
このストーリー、最近は大きく変わり、女性の方が投資には長けているケースも多く「私をCFOとお呼び!!!」「私にお金を預ければ年間5%の利回りで回してあげるわ。その代わりそれを超えた分は私の買い物代に消えるけどあなた、いいわよね」と。
投資はリスクと背中合わせであることは確かです。ただし、みそも糞も一緒にしてはいけません。リスクの度合いは様々なのです。例えば多くの方は競馬競輪などはギャンブルと称します。これは外れればゼロだからです。これに近いのが宝くじなのですが、なぜかこれには夢があるとされます。競馬競輪は当たっても万馬券が出ればともかく、普通はせいぜい数倍だけど宝くじはロト7だと33万倍にもなるので夢と称するのでしょう。
で、普通の方が投資で思いつくのは定期預金。今なら年0.2-0.3%ですが、銀行がつぶれない限り利息は確実。一般の人が投資しやすいのは株、投資信託、国債、不動産が好きならREITもあります。一歩進むと仮想通貨、金関連、更に先に進むと投資に対するノウハウとセンスと市場との対話がより重視されるので専門的になります。FOREX(外為取引)、株式の先物やオプション取引、未公開株、絵画やトレーディングカードなど狭い領域のバイセルがあります。金持ちの方は昔から不動産の売買を重視してきました。
20‐30年前、投資は1/3ずつにしようといわれました。定期預金、株式、不動産の「投資三分割法」です。私は分割するという発想は支持しますが、1/3という着想は現実的ではないと思います。なぜなら不動産の価格があまりにも高い現実社会において1/3の比率にならないのです。
ではお前ならどう考えるか、であります。私はまず、投資から不動産を外します。理由は家が一軒しかないならポートフォリオにはならないからです。2軒目以降を買う余力のある人はOKですがそのような人は少ないので一般的考察からは除外すべきと考えます。
では流動性の高い現金と同等物で見ると私は普通預金が数%、定期預金が30%、残りが投資です。投資は分散するに限ります。残り約70%の内訳はおおむね株式に35%、ゴールドに25%、仮想通貨に5%、その他5%でしょうか?株式投資のうち、私は投資信託が20%ぐらいで残り80%が個別銘柄です。私の場合、投資信託は上場投資信託が主流で老齢年金のようなものは一般のおまかせ型投信をしています。
これは私の例であって個々人それぞれの強みを生かしながらポートフォリオを考えればよいと思います。ただ重要なのはかなり多岐多方面にわたり投資をしている点です。リスク分散です。
私は投資のことをこのブログで毎週つぶやいています。確かにごく短期から1年ぐらいのことについては想定できるのですが、それ以上になると最近は世の中が複雑で因子が増えたため、予想しにくいのです。それゆえに自分に過信しすぎないようにしています。
そのなかで比較的リスクが少なく、インフレヘッジできるのは金だと思います。一部の人は金に懐疑的なのですが、人類の歴史で金はずっと重宝されてきたのです。それが突然輝かなくなることはないと考えるべきでしょう。金も地金と投資信託と金の採掘会社といった選択肢があります。私はいまだにリスク取りができるので金にしろ、ビットコインにしろマイニング会社への投資オンリーです。ボラは極めて高く仮想通貨のマイニング会社に至っては小規模の会社なら日に5%から10%動くのがざらでギャンブルに近いのですが、そのあたりは個人の能力と投下資産のリスク分散の枠組み内で行うべきでしょう。
投資はリスクの大小と換金性、および取引に伴うコストが全てです。例えば金地金とか不動産はその点で非常に劣る一方、投資信託ではオルカンの信託報酬が0.05%と格安というメリットもあります。それぞれの特徴をチェックして投資を身に着けることで冒頭のような恥ずかしいケースは防げるのではないでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年7月10日の記事より転載させていただきました。