黒坂岳央です。
日本人は仕事へのエンゲージメント、つまりやる気が低い。これは個人の感想ではなく、統計データが存在する。
オランダのランスタッド社の調査(2019年公表)では、日本は「仕事に対して満足」と回答したのは42%。これは34カの国と地域の中で最下位だ。アメリカのギャラップ社の調査(2023年公表)では「熱意あふれる従業員」と回答したのは5%、日本は125カ国中最低である。
なぜ日本人は仕事のやる気がないのか? 一部の人は「それは上司や会社が社員を使い捨てのコマと考えており、上手にマネジメントせずにモチベーションを引き上げる努力をしていないからだ」という。本当だろうか? この説が正しいとすると他の先進諸国で日本よりマネジメントが優れている証拠を必要とするが、探してもそうしたデータは見当たらない。
そもそも、上司の仕事とは部下のやる気を出させるのではなく、生産性と粗利を最大化するために組織全体的なオペレーションを管理するのが本来の職務だ。やる気とは本来、各々が自己管理するもので上司のマネジメントによる副産物であっても本業ではない。
個人的には別に原因があると思う。
転職をする
日本人は仕事のやる気がないだけでなく、勉強もしない。社会人が仕事以外で学習、自己啓発など何も行なっていない人の割合が最も高い国は、53%でダントツ1位が日本だ。「それは日本は貧しくなったからだ」と言われそうだが、総GDP、個別GDPともに日本より遥かに低い国も日本人より遥かに勉強をしているので、その説は明確に否定される。
1つ目の理由は労働市場の流動性の低さにある。とっくに時代は変わったが、未だに転職をリスクと考える人は少なくない。だが1社に滅私奉公しても給料は上がらない。頑張っても報われないならやる気が出ない、というわけだ。しかし、昇給を待つより、スキルや知識をつけて転職をした方が確実に収入アップを実現できる。その理由はシンプル、無い袖は振れないからだ。
日本は中小企業の割合が全企業数のうち99.7%と非常に多い。一部は儲かっていても、ギリギリのところで存続している企業も少なくない。どれだけ頑張っても利益が少ないなら給料を上げることはできない。それなら高く売れるスキルを付けてさっさと転職するしかない。
自分自身が転職するたびに年収アップした経験があるし、親族にも20代で年収1000万円を突破したものもいる。仕事の内容も給料も努力次第で増やせるなら「やる気がない」などと言っていられないだろう。今や労働市場は平成とは違っており、ドンドン転職をしてキャリアアップ志向を持つことが肝要だ。
「仕事は与えられるもの」と考えない
もう1つの理由は他責思考によるものと考える。仕事は自分で掴むものではなく、上から与えられたものを卒なくこなすという感覚だと、仕事にやる気が出なくて当然である。「いや、会社員は実際そうではないか」と反論されそうだが、その仕事や職場を選ぶのは紛れもなく自分自身である。
我が国には職業選択の自由があるのだから、やりたい仕事を自分で探してチャンスにはドンドン手を上げて自分のスキル向上につながるもの、納得の行く収入が得られる仕事を自分で掴むことが可能だ。自分は複数社転職を経験しているが、転職した後は社会で公募があれば積極的に手を上げ、自分のやりたい仕事を主体的に選んでいたので「やる気がないけど生きるために我慢して働く」という感覚はなかった。
年齢を重ねてライフステージも変われば、仕事に求める価値観もスキルや経験、労働市場の環境も変化する。20代前半で始めた仕事が40代になっても完全にあうケースの方が珍しいだろう。それならその時々に応じて、自分が望む仕事を自己内観した上で、必要に応じたアクションを取ればいいと思うのだ。
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様々論じてきたが、仕事のやる気とは自分の裁量や努力で変えうることができると考えれば自然に湧いてくる。その逆に「置かれた場所で咲く」とばかりに、ただただ上から降ってきた仕事をこなす作業ロボになることを受け入れた時、ビジネスマンとしての魂は死ぬだろう。
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