吸い込まれるような深き青「仁淀ブルー」を訪ねて

近年「仁淀ブルー」という言葉をよく聞くようになりました。

高知県の清流といえば西部を流れる四万十川が有名でした。

こちらは四万十川の沈下橋。

もちろん四万十川の清らかさは今も変わることはなく観光客を魅了し続けていますが、近年注目を浴びているもうひとつの清流が仁淀川。愛媛県の石鎚山に端を発し、高知県の中部を流れて土佐市で太平洋に注ぎ込む全長124kmの河川です。仁淀川は透明度が高く不純物が少ないため光の波長が短い青い光を反射します。その青さをカメラマンの高橋宜之氏が「仁淀ブルー」と呼んだことで全国にその名が知れ渡ることになりました。今回はその青さを間近で見ようと仁淀川とその支流にある渓谷を訪ねました。

アニメ映画の舞台となった沈下橋へ

川の増水時には川の下に沈み、流木などがその上を通りやすくする「沈下橋」。全国に存在するものの特に有名なのが四万十川のものですが、仁淀川にも多くの沈下橋が存在します。中でも有名なのが越知(おち)町にある「浅尾(あそお)沈下橋」です。

麻生沈下橋から鎌井田集落を望む。「竜とそばかすの姫」のワンシーンに描かれました。

この橋、アニメファンならご存じだと思いますが2021年に公開された「竜とそばかすの姫」に登場した沈下橋。主人公のすずはここを通って通学していました。アニメの公開以後観光客が多くここを訪れるようになりました。北側の鎌井田集落側には何台か車を停めることができます。

沈下橋は車も通ることができます。浅尾沈下橋は幅が広いので車も比較的楽に通ることができますが、やはりなれていない人にとって欄干のない橋を渡るのは怖いもの。道を誤って川の南側から来ると駐車場に行くためにこの橋を渡らなくては行けなくなりますので注意が必要です。

橋の上から仁淀川の流れを眺めます。下流に近いこの辺りの仁淀川はターコイスブルーに輝きます。

橋げたに足をかけて座る若い男性ふたり。何を語っているんでしょうね。

今は立派なコンクリートでできたこの橋ですが、かつてここに橋はなく、浅尾集落から対岸へは船で渡っていました。しかし増水時は渡れず学校にも行けなかったり、船が転覆して命を落とす事故も絶えませんでした。

1970年に一部木造の橋が完成、74年にコンクリート造となり浅尾集落は橋でつながることとなったのです。この美しい橋ができた背景には住民たちの苦労があったことを忘れてはいけません。

仁淀川の支流、安居渓谷へ

バーベキューなどもできるようで地元の方も多く来ていました。

浅尾沈下橋に別れを告げ、車を四国山地の方へ走らせます。越知町から仁淀川町へ。断崖絶壁の下を走る細い道路を登った先にあるのが安居(やすい)渓谷。仁淀川の支流、安居川の流れが作った峡谷です。駐車場から上流に向かって少し散策してみることにします。

見えました、仁淀ブルー!浅尾沈下橋でみたターコイスブルーは静岡県の寸又峡でも見たことはありましたが、クリームソーダのような透明感の強い青を見たのは初めてかもしれません。

流れていく川よりも淵に溜まる水の方が青さがはっきりとわかります。

流れゆく水さえ青い!

途中、乙女河原では川まで下りることができます。

石橋の向こうには飛龍の滝や水晶淵などもあるのですが残念、戻る時間が来てしまいここで引き返します。

石橋の上から安居川の流れを撮影します。これだけ川面に近い場所から写しても水が青く輝きます。

存分に美しい青の世界を見せてくれる仁淀川水系。色鉛筆で淡い青を水色といいますが、かつては日本中の多くの川が美しい水色だったのでしょう。現代では水の色といえば「透明」。ひとつでも多くの川がこの仁淀川のように再び青く輝くことを願ってやみません。


編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2024年7月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。