誰でも文章がスラスラ書けるようになる「話すように書く」文章術(滝川 徹)

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音声入力で文章を書いてもどうせ加筆・編集しなければならないなら、タイピングしたほうが早い。そう感じる人も多いだろう。しかし実は、加筆・編集しなければならないとしても、タイピングするより音声入力したほうが文章は速く書ける。

そう語るのは現役会社員・副業講師の滝川徹氏。今回は、滝川氏の著書『ちょっとしたスキルがお金に変わる「副業講師」で月10万円無理なく稼ぐ方法』より、音声録音を活用した文章術について、再構成してお届けします。

音声「録音」という新しい手法

私は「話すように書く」というアイデアを知ってから、自分でも驚くぐらい文章を早く書けるようになりました。これからブログをはじめとした文章による情報発信をはじめよう。そう考えられる人もいるかと思います。

そんな方に向けて、昔の私が知りたかった、とっておきの文章術をお伝えします。それは音声入力ならぬ音声「録音」を活用する方法です。まず私が具体的にどのように文章を書いているか紹介します。その後、なぜそうしたやり方をするのか、解説しますね。

たとえばこのコラム。どのように書いたか説明しますと、次の通りです。

  1. 音声を録音する
  2. 録音した音声を文字起こししてテキスト化(文章化)する
  3. テキスト化した文章を編集する

順番に解説します。まず音声を録音します。今回のコラムを書くにあたっては、私の現在の文章の書き方を紹介したいと思いました。セミナーでこのことについて話をするしたら、どんなふうに話すだろう? こう自分に問いかけ、iPhone に向かって話しはじめて音声を録音します。

音声を録音する方法は自由ですが、私の場合は文字起こしもできるアプリ「CLOVA Note」を使用しています。ここでのポイントは、スピーチのように一字一句間違えず完璧に話そうとしないことです。

実際セミナーで話をする時のように、多少言い間違えてもいい。話がわかりにくければ補足すればいい。そう思って話すようにします。なぜなら、そうしないと話せなくなってしまうからです。あるいは、何度も録音をし直さなければならなくなります。

録音した内容は文字起こしで文章にするわけですが、当然後で編集します。なので、この時点では完璧な内容でなくていいのです。自分が納得できる内容でなくてもいい。とにかく一回、話し切るのが大切なのです。

録音を終えたら、次は「CLOVA Note」を使って録音した音声をテキスト(文字)化します。操作は簡単。いくつか操作をして「音声記録のダウンロード」を選択するだけです。そうすると下図のように、話した内容がテキストデータとして抽出できます。

私の場合はこれをMacの Pages(WindowsでいうWord)に貼り付けて、文章を編集して仕上げます。

このように私がやっていることはとてもシンプル。しかしこれで従来のタイピングと比べて、驚くほど早く文章が書けるようになりました。

なぜこの手法がそこまでの違いをもたらすのか。背景にある理論を説明しましょう。

「話すように書く」とは

一つはこの手法により「文章が思うように書けない」がなくなることです。以前の私は書きたいテーマが頭に浮かんでも、いざパソコンの前に座って原稿を書こうとすると「書けない」「筆が進まない」。そうストレスを感じることが多々ありました。海外では「Writers Block」と呼ばれるものです。作家でもこの悩みを抱える人はたくさんいます。

この解決法を探していると、ある時セス・ゴーディンという海外の有名な作家がYouTubeで話をしているのが目に留まりました。彼は「しゃべるように書けばいい」と言い、Writers Blockなんてありえないと言うのです。

彼の主張は次のようなものでした。人が話をする時、口をモゴモゴさせて文字通り「しゃべれない」人はいない。ということは、理論的には文章を書けない人もいない。文章が書けない理由はただ一つ。一発で完璧な文章を書こうとしているからだと言うのです。

この話を聞いて私は目から鱗が落ちました。たしかに私の場合、セミナーならノンストップで話をすることができます。あなたも友達と喫茶店で話をする時は、いくらでもしゃべれるはずです。

なぜか。あらためて考えてみると、それはスピーチのように一文字一句間違えず完璧に話そうとしていないからではないでしょうか。多少言い間違えてもいい。話がわかりにくければ補足すればいい。無意識ではありますが、そう考えてるから気軽にどんどんしゃべれるわけです。

同じように文章を書けばいいじゃないかというのがセスの提案なのです。一発で完璧な文章を書こうとするから書けなくなる。そうではなくて、後で編集する前提でとにかくしゃべるように文章を書けばいい。

そうすれば言葉・文章自体はスラスラ出てくるはず。これがセスの主張なのです。このアイデアを知るだけでも文章をスラスラ書けるようになります。さらに、音声入力を活用するとより効率よく文章が書けます。なぜか。その理由を説明しましょう。

文章はゼロから書くより編集する方が早い

音声入力を活用する一番のメリット。それはラクということです。同じ3000字を書くにしても、タイピングで書くのと比べて音声入力で書く方が圧倒的に楽です。これはやってみてくださいとしか言えません。

キーボードをタイプしなくていいのはとても楽です。肩もこりません。しかも一般的にはしゃべる速度のほうがタイピングの速度より早いでしょう。そうすると音声の方が早く書けることにもなります。

一方で、音声入力で文章を書いてもどうせ加筆・編集しなければいけない。それならゼロから自分でタイピングしたほうが早い。そう感じる人もいると思います。その気持ちはものすごくよくわかります。何を隠そう、昔の私もそう感じていた一人だったからです。

この考え・思いこみをぶち壊してくれたのが、私が執筆指導を受けている中嶋よしふみさんの「ゼロから書くより編集する方が早い」の一言でした。中嶋さんはウェブメディアの編集長。今まで数多くの文章を編集して記事を作ってこられた方です。

そんな方が、ゼロから自分で文章を作るより編集したほうが早い。そう言われたのを聞き「音声入力も全く同じだ!」と閃きました。たしかに音声入力で出力した文章は不完全です。でも、それを編集したほうがゼロから自分で文章を書くよりも早い。このことに気がついたというわけです。

この気づきと「話すように書く」をかけ合わせることで、私は驚くほど早く文章を書けるようになりました。とにかくまず、思いついたことをどんどんしゃべって録音していきます。それを文字起こしでテキスト化し、素材を作り、編集する。こうした書き方をするようになり、私は「書きたいけど書けない」悩みがゼロになりました。どんどん文章を書けるようになったのです。

ちなみに今の私は音声「録音」をしていますが、いわゆる音声入力でもほぼ同じことはできます。少し前は私もGoogleドキュメントを使って同じことをやっていました。iPhoneのGoogleドキュメントのアプリに向かってしゃべると、かなり高い精度で文字・テキストになります。そうして素材を作り、編集すれば同じことができるのです。

私が「CLOVA Note」を使って音声録音をしているのは、そのほうがほんのわずかではありますが、文字・テキストになる時の精度がGoogleドキュメントより高いと感じるからです。ただし、Googleドキュメントの精度も今では相当なものです。音声入力をするか音声録音をするかは、厳密には好み次第といえるかもしれません。

ここで書いた話は次の本にしようと思ってるくらい、私には革命的なことでした。この手法は慣れると本当に驚くくらい執筆が楽になり、スピードが上がります。騙されたと思ってぜひ試してみてください。

滝川 徹(時短コンサルタント)
1982年東京生まれ。Yahoo!ニュース・アゴラで執筆記事が多数掲載される現役会社員・時短コンサルタント。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけにタスク管理を習得。2014年に組織の残業を削減した取り組みで全国表彰。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。時間管理をテーマに2018年に順天堂大学で講演を行うなど、セミナー講師としても活動。受講者は延べ1,000名以上。月4時間だけ働くスタイルで4年間で500万円の収入を得る。著書に『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング)』『ちょっとしたスキルがお金に変わる「副業講師」で月10万円無理なく稼ぐ方法(日本実業出版社)』他。

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年6月28日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。