「常識が通じない若者」は本当に増えたのか?

黒坂岳央です。

SNSや記事を中心に「最近の若者、Z世代は何を考えているかわからないので対応に困る!」という意見をよく目にする。特にこれまでの仕事の常識が通じないと嘆くオジサンからの投稿が多いように感じる。

自分は経営している会社でZ世代がいるし、パーソナルジムのトレーナーもZ世代の若者だ。園の保護者会でもZ世代の親と会話することもあるので、日常的に仕事やプライベートで話をすることがある。独断と偏見で取り上げたい。

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常識が通じない若者はどこ?

結論的に一部の奇矯、突飛な事例がSNSで取り上げられていることが多いように感じている。Z世代といっても、同じ文化で育った同じ日本人で、外国人ほど感覚は違うということはない。

たとえば「挨拶なんてムダ」という人がいれば、「Z世代はおかしな価値観を持っている!」とたちまち炎上してしまうが、それはたった一人の若者の意見に上の世代が過剰反応しているだけである。同じ内容のことをオジサンがいっても「ああ、この人は常識がないんだな」で処理され、誰からも相手にされないだけだ。

加えて、たった1つの発言を受けただけで「Z世代は挨拶をしない」と解釈するのは、あまりに短絡的拡大解釈である。あくまで一部であり、ほとんどの人は挨拶の重要性を合理的解釈をしている。実際、自分が日常的に彼らに接していても、元気よく、気持ち良い挨拶をする人ばかりであり、「挨拶がムダ」と考えていると思しき人物とは会ったことがない。

おかしな人、一般常識が通じないのは年代というより「その人個人の問題」である。

最もスレ違うのは職場

おそらく、世代間のギャップが一番出やすい場所は職場であろう。会社ではいろんな年代やバックグラウンドを持つ人が働いており、それぞれの「あるべき論」を持っている。

たとえば「技術は見て盗め」と考える上の世代のベテラン社員はそれなりにいる。自分たちが新人だった頃に社内Wikiやマニュアルなど完備されていなかったのが普通だからだ。

しかし、今の時代にこんなことを言っても通用しない。あらゆる技術は反復が前提であり、見て盗めは技術獲得のプロセスに合理性がない。一方でしっかりとしたマニュアルがあれば、それを見ながら技術に慣れるまで繰り返す過程で熟練する。どちらに有効性があるかは明らかだ。マニュアル化が難しいプロセスも存在するだろうが、少なくとも新人が対応できる程度の仕事はマニュアル化が望ましいだろう。

こうした価値観のズレはどちらに合わせるべきか?というと、それは合理的な方であろう。つまり、上記の事例は「今どき、マニュアル完備していないのですか?」と若者から指摘されたなら、ムッとせずに合理的なマニュアル完備の体制へアップデートするべきなのである。

仕事は結果を出すことがすべてであり、経営者は従業員に支払う給与以上の粗利を出す構造を作れなければ、その企業に持続可能性はなく倒産は免れない。

「たかがマニュアルの話くらいで大げさな」と思われるかもしれないが、こうした小さなオペレーションの改善が一切起きない硬直化した組織体制は、仕事の大小に関わらずやがて時代の変化に対応するアジリティに問題を抱えていると判断できる。そうなれば全社的に見て、日々変化に対応できる企業に競争力の面で劣後するだろう。

上の世代の中には「若者に古い価値観だとバカにされたくない。嫌われたくない」とやたらとヘコヘコ低姿勢で接する人もいる。しかし、こと仕事における文化や慣習、オペレーションで重要なのは「新しさ」ではなく常に「結果」だ。より粗利を出し、顧客満足度を高められるやり方があるならそちらのやり方を採用する、というシンプルな軸で考えれば良いと思うのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。