パリ国立オペラ座バレエ、ヌレエフ「ドン・キショット」、2回目。ヴァランティヌ・コラサント&ギヨーム・ディオップ。
ギヨーム祭りというか、ギヨームの一人舞台。
登場と同時に、そこにスポットライトが当たる感じ。昔のエトワールたちに、そんな、存在が自然に輝くダンサーが何人かいたね。今は・・・(自粛)。
立ち姿はもちろん、彼の最大の魅力だと思う、動いた時の実に伸びやかでエレガントな腕脚手足と首にうっとり。滑らかで優雅で自然で、本当にきれい。すっと伸びる後脚もほんとにいい。サラブレット的な気品ある美しい動きに惚れ惚れ。往年のジョゼを彷彿させる。
そこに技術も加わるので、文句なし。高い跳躍、伸び伸びと広がるピルエット、ポルテも合格点超えてる。
1幕、片手でキトリを持ち上げるシーン、最初はちょっと動いちゃったけど2度目はきちっと停止し、そのまま1〜2秒キープ。おぉぉ、素晴らしい!思わず拍手。最近、ピシッと停止できるダンサーほとんどいないし、この間のジェルマンに至っては両手であげてた、、。往年のニコラやマニュを彷彿させる、見事な片手リフト。
しかも大柄なヴァランティヌが相手。予定通りレオノールだったら2度とも完璧に止まっただろうし、停止時間ももっと長かったのでは?(ギヨームのインスタに、このシーンの映像あります。見る価値あり)
3幕コーダも、なんかちょっと普通と違う技術いれたように見える。
全体を通しての輝くような笑顔、かわいらしい演技、楽しみながら全力で踊っているのがよくわかる雰囲気、そしてアリュール。
オペラ座バレエにいてくれて、ただただありがたい。今の男性エトワールたち、開店休業だったりもっとできるはずなのに全力尽くしてなかったり雰囲気なかったりと、満足できる舞台をなかなか見せてくれないなか、この手の作品のギヨームは、とても貴重。2年前のバジルデビュー時、当日降板で観られなかったので、ほんとよかった、今日、彼のバジルを体験できて(レオノールとパブロが降りたので、チケット売ろうかと思ってた)。
キトリでエトワールになったヴァランティヌ。前シリーズ同様、大味ではあるけれどお上手。この役なら、悪くない。多少流してるところはあるけれど余裕で安定感あるし、演技こなれてて、3幕のエキリブルはラストの前からかなりバランス保ってるし、ラストのつま先時間の長さと脚の高さ、見事。
ただ、今まで観てきて感動をくれたキトリたち、アニエス、マリ=アニエス、レティシア、オレリー、ミリアム、ドロテ、リュドミラの、圧巻の技術や表現力、美しいラインや演技力が忘れられないので、比べちゃうとどうもこうも・・。
25年前は、毎夜どの配役でも、ドゥミソリストまで含めて3〜4人は見応えたっぷりだったキショット(なんならコールのエルヴェやヤン、マチュー、ドロテ、ミリアム、アレッシオらまで最高だった)。今夜心から満足できたのはギヨームだけだし、この間は一人も満足させてくれなかたったし、前回シーズンも今ひとつ。作品自体の出来がよいのでとても楽しくはあるのだけれど、昔感じた、心躍りワクワクが止まらないような舞台は、もう2度と観られないのかな。
なにはともあれ、ギヨームに心から拍手と感謝(辞めないでね)。
編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々5」2024年4月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々5」をご覧ください。