「国立公園に高級リゾートホテル誘致」の誤解を解説する

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「国立公園に高級リゾートホテル誘致」報道に騒いでる人の多くは、ニュースの見出しだけで「国立公園が乱開発される!」と早合点して憤ってるか、計画内容関係なく、政府批判のために利用してるかのどちらか、って感じで実に興味深いです。「神宮外苑の森を守れ!」と叫んでた人たちと重複しますねえ。

政府公開資料も読んだうえで、私は「既存の観光資源を上手く活用して稼ぎ、インバウンドの偏在を改善でき、稼いだお金で自然保護も両立させられる妙案!」と大いに期待を抱いてます。

本報道に憤ってる人がカン違いしているかもしれない点への解説を兼ねて、本プロジェクトの興味深いところをお伝えしていきますね。

(1)国立公園を開発するなんてとんでもない! 大切な自然を守れ!!

「国立公園=その辺のちょっと広い公園」みたいなイメージで言ってるのかもしれませんが、国立公園ってひとつひとつがメチャクチャ広いんですよ。我が国に存在する市区の平均面積は「約17ヘクタール」なのに対して、国立公園の平均面積は「73,755ヘクタール」。3ケタも違います。たとえば大雪山国立公園なんて、大阪府全域がスッポリ入るほどの広さですからね。

当然、全ての国立公園が原野というわけではなく、既に観光地として開発され、多くの施設が並び立つ市街地が含まれてる所もあります。また中には、1960年代までに開発され、現在は廃屋となり景観を損ねているケースもある。

今般の取組は、新たに開発を広げるというより、そんな既存開発エリアにハイクラスホテルを呼び込み、「エリア全体を上質化して再生を目論む」というポジティブな意図があります。

(2)そもそも、野放図な開発を制限するために国立公園にしてるんだろう!?

国立公園は、自然や景観の保護だけでなく「その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資する」ことも役割の1つです(自然公園法1条)。中には「特別保護地区」として、落ち葉1枚も持ち帰れないほど厳しい開発制限が敷かれている場所もありますが、届出すれば開発可能な「普通地域」というエリアもあります。

 

国立公園のうち国有地は約6割。残りは公有地と私有地で、公園内でも日常生活や産業が普通に営まれてますし、そこには公園利用者が減ると生活が成り立たなくなる人がいます。公園内施設の維持管理にもお金はかかりますから、保護と振興利用はセットで考えなくてはいけません。

(3)国立公園内にホテルを建てるなどけしからん!!

既に多数のホテルが国立公園内に存在し、営業してますよ。国立公園内でホテル建てたらダメというなら、箱根のホテルなんて全部ダメになるんですけど。

 

そもそもあなた、この報道が出るまで、国立公園内にどんな施設があるかなんて気にしたことなかったでしょ?

(4)今さらインバウンドが増えても迷惑! 観光公害を増やすな!!

インバウンドは東京、大阪、京都の「3大都市圏だけで7割超」と偏在していることもあり、地方部への誘客が求められています。

観光業は「生産波及効果19兆円・雇用誘発効果156万人」と試算され、現地にお金が落ちればホテル業から波及して飲食、小売、サービス、運輸、農水、不動産、金融業まで広範に潤う産業。インバウンド効果が地方でも実感できる仕組みが求められているのです。

我が国の国立公園には素晴らしい自然の魅力がありながら、世界の富裕層を惹きつけるだけのハイクラスホテルと観光パッケージが足りておらず、実に惜しい状態でした。

今般の取組により、自然を活かした形でアクテビティを充実させ、各地域観光資源を磨き上げていくことができれば、国立公園がグローバルに誇れる素晴らしい観光コンテンツになることでしょう。

ぜひ自然環境にも、それぞれの土地の人の暮らしにも配慮しつつ進めていって頂きたいところです。


 

(編集部より)この記事は、新田 龍@nittaryoのポストを、許可をいただいた上で転載いたしました。