何処に行く、株価と為替の向かうところ:トランプトレードからのゆり戻し

7月10日ごろにピークを付けた日米株価はその後、大きく調整に入りました。日経平均の場合、42400円台から昨日の39500円台ですからざっくり2900円の下げです。比率にして6.8%。2週間での下げとしては大きいと思います。ダウは1000㌦程度の調整幅で比率にして2.4%、ナスダックも1000㌦、5.3%程度の調整でしたがこちらは一足先に立ち直りが見えます。チャートだけを見ると日経平均もダウも調整が進んでいるようにも見えます。

一方、為替についてもドル円で見れば7月10日ごろに円が最安値を付けて7円ほど円高に振れたところにあります。

マーケットを語るにあたって、まず大局として夏休みシーズンにあり、市場に買収などの企業ニュースが少なく市場参加者もやや減っていること、次に4-6月決算発表が始まるところでこれから2週間程度はその内容に一喜一憂することを想定しておかねばなりません。決算については個人的には日米ともにまちまちだろうと予想しています。

次に大統領選に向けて候補者がどのような発言をするかにより大きな影響を受けます。例えば1週間前まではトランプトレードなどと称し、氏の公約や発言をベースに銘柄を選択する動きが強まり「東高西低」(伝統銘柄が高く、ナスダックが安いこと)現象が起きましたが、バイデン氏が大統領選からの撤退を表明し、ハリス氏がその指名に確実に歩を進めていることから「西高東低」へのシフトにゆり戻しているように見えます。

トランプ氏とハリス副大統領 両氏インスタグラムより

3つ目に来週に迫る日米の中央銀行政策決定会合で何が語られるかが大きな焦点となります。日程はともに30日から31日ですが時差の関係上、日本が半日ほど先に発表することになります。今回の注目点は日銀が国債買い入れペースをどのようにスローダウンさせるのか、そして利上げに向けた具体的な動きがあるのか、です。

国債買い入れのスローダウンは前回の会合で既に明示されているのでそのペースがどうなるかが注目ポイントです。利上げについてはやや躊躇しているようにも見えます。ただし、9月は自民党総裁選が間近であり、自民党関係者から無言の圧力が日銀に向かうはずで動きづらいだろうとみています。一方、その次の10月30-31日まで待つとインフレが進行するリスクと金融政策正常化の勢いに乗りそこなうことになるため、かなり難しい判断になりそうです。

一方アメリカのFOMCではパウエル氏は「我々の望む方向に状況が改善していることが統計からも見て取れるので次回の会合で一定の判断を下す可能性もある」という趣旨の発表ではないかと勝手に想像しています。9月利下げは市場関係者ではほぼ織り込み済みです。インフレと雇用状況から政策金利を今ほどの高い水準に維持する理由は無くなりつつあるとみています。

とするとこれから先、2週間はネタが多く、株価、為替とも大きく動く公算はあると思います。また市場参加者が少ないということは値動きが荒くなるという意味でもあります。個人的にはチャートから見ると目先は日米とも調整完了となれば再度上昇に向かうように見えます。ただし、日本が31日に利上げないしそれに近い具体的発表があればマインド的に拒絶反応を示す可能性があり、円高も伴えば再下落の覚悟は必要です。その場合、チャート的には崩れます。一方のアメリカは比較的堅調になると予想していますが大統領選の行方が混とんとなれば市場が「がっぷり四つ」になる可能性もあります。

もう一つ、私が気になるのはイスラエルの動きで戦争が新局面に入ってきているように感じます。フーシ派との直接交戦が始まり、イスラエルは二面作戦を展開せざるを得ません。ところが国際世論はイスラエルに協力できる状況になく、盟友アメリカはバイデン氏が大統領選からの撤退を表明した以上これから来年1月までは外交の長期ビジョンが形成されにくくなります。ところがフーシ派は徹底的な争いをする姿勢を見せており、深刻な事態に陥ることもあり得ます。それでも株式市場だけは踊れるのか、ここは不安材料として掲げておきます。

投資をするにはファクターを並べる、そして大局をつかむことが大切です。ただし、個別銘柄は大局とは無関係に動くこともあり、実に奥行きが深いと思います。頭のトレーニングだと思いながら皆さん、是非とも勝ち抜いていただければと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年7月24日の記事より転載させていただきました。