原子力規制委員会は11月13日、日本原電の敦賀原発2号機について、新規制基準に適合しないとする審査書を決定し、敦賀2号機は廃炉になることが確定しました。2024年7月22日の池田信夫blogの記事の再掲です。
日本原電敦賀2号機
この決定について朝日新聞は「約12万~13万年前以降に活動した可能性が否定できない断層を活断層とみなし、その上で原子炉などの重要施設を運転することを認めていない」と書いているが、これは誤りである。
1978年に「過去5万年以内に地盤が動いていないこと」という耐震指針ができ、1982年に着工した敦賀2号機はこの基準を満たしている。この指針が2006年に「過去12~3万年以内」と改められ、2010年に「活断層の上に重要施設は建設できない」と改正された。
これは原発を建設するときの規定であり、運転についての規定ではない。既存の原発が耐震指針を満たさないことが判明した場合の運転についての規定はない。これは2010年耐震指針の遡及適用である。
敦賀2号機が廃炉になると約2000億円の資産が失われ、日本原電は債務超過になると予想される。これは日本原電への死刑宣告である。同社は5電力の出資で運営されているので、これは規制委員会による重大な財産権の侵害である。
政府が法の遡及適用で企業を経営破綻に追い込む
建設したときは適法だった発電所が、法律や安全基準が改正されると事後的に違法になって廃炉になるというのは「建築基準法が改正されたら古い建物は取り壊せ」というのに等しい。
このまま敦賀2号機が廃炉に追い込まれると、他の原発も建設後に活断層が見つかると運転できなくなる。今後どのように耐震指針が強化されるかは予見できないので、新しい原発は建設できない。
安全基準が強化されたとき、古い施設が不適格になる既存不適格は、一般には容認する判例が多い。建築基準法では1981年に耐震基準が強化されたが、それ以前に建てられた建物が違法になったわけではない。
「原発のリスクは特に大きいので、普通の建築物とは同列に扱えない」という反論もあるが、原発を特別扱いするならそういうバックフィット立法をすべきだ。原発の安全性を高めることは望ましいが、それを厳格に適用して廃炉にするのは財産権の侵害である。
本件の耐震指針の遡及適用には法的根拠がない。民主党政権の時代に新規制基準を遡及適用したことが前例になり、規制委員会の誤った法解釈が続けられている。日本原電は行政訴訟で、耐震指針の遡及適用の違法性を問うべきだ。