敦賀2号機の廃炉は「法の遡及適用」(アーカイブ記事)

原子力規制委員会は7月26日に開いた審査会合で、日本原電の敦賀原発2号機について「原子炉の真下に活断層がある可能性を否定できない」との結論を出し、敦賀2号機は廃炉になることがほぼ確定しました。2024年7月22日の池田信夫blogの記事の再掲です。

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日本原電敦賀2号機

この問題について日経新聞は「原子炉の建屋の真下に活断層があれば運転できない」と書いているが、これは誤りである。1978年に「過去5万年以内に地盤が動いていないこと」という耐震指針ができ、1982年に着工した敦賀2号機はこの基準を満たしている。

この指針が2006年に「過去12~3万年以内」と改められ、2010年に「活断層の上に重要施設は建設できない」と改正されたが、これは原発を新設するときの規定であり、既存の原発が耐震指針を満たさないことが判明した場合の規定はない。これは2010年耐震指針の遡及適用である。

敦賀2号機が廃炉になると約2000億円の資産が失われ、日本原電は債務超過になると予想される。これは日本原電への死刑宣告である。同社は5電力の出資で運営されているので、これは規制委員会による重大な財産権の侵害である。

政府が法の遡及適用で企業を経営破綻に追い込む

建設したときは適法だった発電所が、法律や安全基準が改正されると事後的に違法になって廃炉になるというのは「建築基準法が改正されたら古い建物は取り壊せ」というのに等しい。

このまま敦賀2号機が廃炉に追い込まれると、他の原発も建設後に活断層が見つかると運転できなくなる。今後どのように耐震指針が強化されるかは予見できないので、新しい原発は建設できない。

安全基準が強化されたとき、古い施設が不適格になる既存不適格は、一般には容認する判例が多い。建築基準法では1981年に耐震基準が強化されたが、それ以前に建てられた建物が違法になったわけではない。

「原発のリスクは特に大きいので、普通の建築物とは同列に扱えない」という反論もあるが、原発を特別扱いするならそういうバックフィット立法をすべきだ。原発の安全性を高めることは望ましいが、それを厳格に適用して廃炉にするのは財産権の侵害である。

本件の耐震指針の遡及適用には法的根拠がない。民主党政権の時代に新規制基準を遡及適用したことが前例になり、規制委員会の誤った法解釈が続けられている。日本原電は行政訴訟で、耐震指針の遡及適用の違法性を問うべきだ。