人工知能より人の方を信頼する?

Nature Medicine誌に「Influence of believed AI involvement on the perception of digital medical advice」という論文がオンラインで公表されている。3つのグループに分けた約1200人を対象に、「人だけ」「人+人工知能」「人工知能だけ」が医学的なアドバイスを与えた場合の影響を調べた結果が報告されている。

人工知能生成AI Vertigo3d/iStock

Empathy(共感、私は「思いやり」と表現することが多い)に関しては、予想されたことだが、「人」の関与が重要視される。信頼性に関しても「人」が関与した方が高かった。しかし、不思議なことに「人+人工知能」「人工知能だけ」が「思いやり」についても「信頼性」についても評価が低いのだ。

私のように生成AIにはまっている人間は、人工知能(AI)の関与が医療の質を上げるには非常に重要だと思っているのだが、一般的な印象は「人工知能」に対して冷たいようだ。「人+人工知能」によるアドバイスは相乗効果があるはずだが、評価としては「人だけ」よりも悪く、「人工知能だけ」に近いのは、「人工知能」に対して得体のしれないものだという印象が強いからなのだろう。

筆者たちは、人工知能を医療現場で活用するためには、この論文で可能性が示された「人工知能バイアス」の克服が重要だと述べている。人工知能の実践もなかなか難しい。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年7月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。