ひと時日本の若者の間で話題になった「海外で稼ごう!」というのは本当の話だったのかと見紛うばかりの状況になっています。アメリカ大陸でゴールドラッシュがあった時、一山当ててやると血気盛んな男たちが西へ西へと進んでいったあの時と似た話で実際にゴールドを手にしたのはほんの一握りの人だけだったという話に一攫千金とはまさにこのことだと思います。
バンクーバーはワーキングホリディのメッカ。そしてCoopという学校に通いながら就労ができるビザも高い人気があります。私の所属するNPOに学生さんやワーホリさんのボランティア活動参加申し込みが多すぎて溢れてきているようです。先日のBBQ大会では例年の2倍以上のボランティアさんが一生懸命手伝ってくれたのですが、その理由が「仕事がないからせめてボランティアをする」です。
オーストラリアでは一つのレストランに20名以上が就業登録していてワークシェアリングのような形をとっているところもあると報じられていました。ではバンクーバーはどうか、といえばそもそも日本人経営の飲食店はほとんどが個店経営で数も知れているので受け入れ枠が限られるという問題があります。
バンクーバーには日本食レストランはたくさんあります。ただ、ちょっと街を離れると日本人がやっているのではなく、韓国人経営が大半です。そのような店は当然ながら韓国人の従業員を雇いますので日本人の需要は極めて少ないし、韓国人経営の下で日本人はやりにくいようです。それは年配の人たちがいう日韓の感情の問題の話ではなく、経営の熱量が韓国人は熱く厳しすぎて日本人の若者では続かないのです。こうなると「皿洗い」の仕事もゲットできないのです。
カナダ全体で年間6000人程度のワーキングホリディの学生に就労ビザを持つ学生も相当数来きています。するとバンクーバーだけでもざっと年間3000-4000人の一時滞在の就労予備軍がいると想定できます。失業率はカナダにしては悪くない6.4%(6月時点)なのになぜ日本人の若者は仕事が見つからないのでしょうか?
ずばりスキルだと思います。外国で売り込める能力は語学よりも特化された技能です。例えば私の支援する訪問介護事業では常時人材募集をしていますが、看護師、ないしそれに準じる経験者が採用の前提になります。理由はそれらの人は医療に対する基礎知識を持っているので仕事の基本がわかるからです。それでも最近は看護師ならだれでもよいというわけではなく、人間性も採用考課になります。そうなると看護師の専門学校卒よりも大学の看護科を出た人の方が総合力で有利な傾向が見て取れます。理由は広範囲な勉学を通じて高いレベルの知的能力と判断力の潜在性があるからかもしれません。
日本で一般企業に漫然と入社するとそこで社畜化されてしまいます。そして最近の大手企業は従業員に雇用形態などで様々な「配慮」をするところが増えています。1970-80年代は「会社の保養所」が入社の動機の一つだったりしました。それがしばらく途絶えたのち、新しい形で社畜化するためのフレキシビリティある働き方というおいしいおやつやデザートを会社が提供します。
そうなると入社して1-2年もすれば皆さんご承知の通り「うちの会社は…」とやるわけです。「うちの会社ってあなたの会社じゃないでしょう」といつも思うのですが、要するに会社と結婚したような状態になるわけです。
一方、明白なビジョンをもった学生もいます。先日は私立の名門K大学を1年休学してきている方と話をしました。コンサル系の会社に入り、将来は起業をしたいと。いいですねぇ。で、何を?と聞くと「飲食系で」と。あれ?とそこでテンションが下がりました。この学生さんと深く話したわけではないのですが、起業のイメージがないのだと思います。日本の街中でビジネス起業=小売りか飲食というイメージが強すぎるし、それを飛び越えた創造力を求めてもいかんせん経験値がないので何も思い浮かばないのでしょう。
起業で成功するのはブルーオーシャンの事業です。これは断言します。つまり誰もやっていない世界にチャレンジしてめちゃめちゃ苦戦することなのです。そのハードルが高ければ高いほど追随は来ないのです。
外から見ていると最近の日本のビジネスは改良型は多いけれど革新的なものが出ていません。革新的事業とは別にAIとかロボットを駆使した事業ばかりではありません。日本の悪いところは革新的な起業者が自慢げにSNS発信するので事業が成熟する前にアイディアが盗まれて追随者がどっとやってくる点です。日本人はみな虎視眈々とチャンスを狙っているのです。特に飲食経営者はアイディアを探すために必死です。なので雑誌やYoutubeなどで紹介された飲食店は案外数年後には無くなっていたという話があるのは全部盗まれているからです。日本はそういう悪い傾向があります。
創造力をつけるにはまずはスキルを身に着け、かつ広範囲な知識を持つことです。海外に出てみて自分をニュートラルに保ちながらできる限り多くの人たちと様々な話をしてくることかと思います。いかに自分にスペシャルな能力がないかを思い知ることになるでしょう。逆にそこで自己発掘できれば発想の泉となること、請け合いです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年8月4日の記事より転載させていただきました。