効率を気にしすぎると逆に効率が悪くなる理由

黒坂岳央です。

「仕事や勉強は要領よく、効率よく進めるのが重要!」こういう趣旨の主張をする人は少なくない。

正直、効率!効率!と口癖のように言う人の中で、本当に効率が良かったり仕事や勉強で成功を手にした人間を自分は一人も見たことがないのだ。もちろん、できる限りムダを減らす努力は必要だし自分もそうしている。問題はそれが行き過ぎた時だ。

彼らは「最短最速で成功する方法でやれ」といった煽り記事や動画の犠牲者とも言える。自分は英語を教えるチャンネルを運営し、その他ビジネスでもアドバイスを求められる立場なのでよく分かるのだが、「世の中には自分が知らないとっておきの速習、スピーディーに成功する方法論があるはずで、それを手にすれば市場平均の何倍も早く成功できる」と彼らは考えてしまいがちだ。

Moor Studio/iStock

効率主義者は効率が悪い

過剰な効率主義者は頭の中は忙しく働いている。1つでもムダを減らすため、より良い方法を求めて持ち時間を使ってひたすら情報収集をし続ける。

しかし、彼らの特徴は脳は忙しいものの、手と足は一切動かさない。頭でっかちで行動力は皆無である。だから彼らは往々にして批評家をやりたがる。もっともらしい意見を口にする一方で、肝心の実績は一つも持っていない。

彼らの問題点は「想定外=ムダ=効率が悪い」と信じ込みすぎていることだ。しかし、どれだけ一流の経歴や経験を持った人でも失敗しないなんてあり得ない。自分は過去に東大卒、ハーバード卒でハイキャリアな人間とも仕事をしたことがあるが、彼らも新しい挑戦となれば普通に想定が外れて失敗する。

問題は一切の失敗を許容しないことではなく、1つの失敗から多くを学び、データを取り、次に活かすことだ。そうすることで徐々に成功率を高め、失敗の延長線上に確実な成功の旗を立てることにある。

それなのに一切のムダを許容できないとなれば、まったくデータも取れないし、経験も積めないから技術も向上しないし、実績は永遠に0のまま。これは効率の良いやり方とは言えない。

車は運転しないと上達しない

効率主義者をたとえると、自動車教習所で運転のマニュアルをたくさん読むが、絶対にハンドルを握らないドライバーのようである。

結局、最低限の座学を受けたら下手でも失敗が多くても、とにかく運転の場数を踏むドライバーが一番伸びることからわかるように、勉強もビジネスも「実践がすべて」なのだ。脳内シミュレーションをいくら頑張ったところで、たった一度の経験には遠く及ばない。

過去記事で書いた通り、現在の自分は子供にプログラミングを教えながら自分でも本を買って独学をしている。でも本を読んでばかりでは上達しないと理解しているので、読んだら実際にプログラムを入力する、また読む、また入力をひたすら繰り返して体で覚えるようにしている。

もちろん、この中ではたくさんの失敗もする。自分が想定通り動作しないことも多い。効率主義者はこの時間を「前進しないムダな時間」と解釈するだろうが、自分はこの失敗を乗り越える時間こそ一番技術が伸びる瞬間だと思っており、壁にぶつかったら嬉しく感じる。

また、生成AIの技術力を高めるために毎日色んな仕事で使い倒しているが、雑誌や書籍を買って新しく知ったプロンプトを毎日1つずつ試している。そうやって1年以上かけて少しずつ使い方に慣れてきた。

ビジネスは「インプット2割、アウトプット8割」くらいの比率が良いと思っている。インプットしないとアウトプットの質も低下するが、インプットばかりではまったく上達しない。直近3ヶ月、大きな失敗をした記憶のない人は「効率ばかり意識してムダを嫌い、結果として行動力が不足している」と考えるべきだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。