ベネズエラの混迷:マドゥロ大統領の再選と野党の勝利宣言

400万票の差をつけて野党が勝利した

政府の発表では、マドゥロ大統領51.2%、対立候補エドゥムンド・ゴンサレス氏44.2%だとして、マドゥロ氏の再選を発表した。しかし、その集計結果を発表するのを控えた。偽った集計だからだ。

その一方で、7月29日に野党指導者マリア・コリーナ・マチャド氏はエドゥムンド・ゴンサレス氏が73%(620万票)の得票率を得たとして勝利宣言をした。マチャド氏によると、マドゥロ氏の得票数は270万票だとした。

元々、マドゥロ氏の親派はおよそ300万人いるというのは良く言われていた数字だ。彼らはマドゥロ氏を支持して食料難にあえぐベネズエラで食料などの支給を受けて来た人たちだ。だから、マチャド氏が指摘するように、マドゥロ氏の得票数が270万票というはそれを具体的に表したものだ。

 マドゥロ政権はもう限界に来ている

マドゥロが大統領として継続できるのは時間の問題である。チャベス前大統領(1999-2013)の銅像もこれまで4つの自治州で破壊された。それは国民によるチャベスとマドゥロの独裁政権への不満が具現化されたものだ。

また今回の違法選挙に対する抗議デモも続いている。ラテンアメリカのマドゥロ氏に味方しそうなチリの左派系大統領ボリッチ氏でさえも、今回の選挙結果は認められないと述べた。またブラジル、メキシコ、コロンビアの左派系の大統領もマドゥロ氏に対し公式の投票結果を公にして、野党と交渉することを勧めている。

この3か国のそれぞれ大統領も今回の選挙結果に疑いの目で見ているということだ。また、アルゼンチン、パナマ、コスタリカ、米国らは対立候補者の勝利を発表した。

 軍隊の中でマドゥロ政権を倒壊させるだけのリーダーが不在

しかし、今後の成り行きについては全くの未知数だ。何しろ、軍隊の中に彼を打倒できるの指導者が不在だということ。しかも、マドゥロ氏の政権維持にこれまでキューバが関与しており、彼らがベネズエラの軍人を見張る諜報活動を展開している。しかも、マドゥロ氏も自国の軍部を信頼しておらず、キューバの軍事組織に依存している。

キューバの独裁政治体制もマドゥロ政権が倒壊すると、キューバの政権自体も揺らぐ可能性があるので、ベネズエラの現政治体制を必死で守ろとしている。しかも、ベネズエラの軍部には麻薬組織も存在しており、マドゥロ政権が打倒されると、彼らも甘い汁を吸えなくなるとして現政権が倒壊することを避けようと望んでいる多くの軍人もいる。

しかし、マドゥロ独裁政権をこれからも維持して行くことはほぼ不可能であろう。廃刊させられたベネズエラのエル・ナシオナル紙のオーナーエンリケ・オテロ氏は「今年1月までであればマドゥロ氏が政権を去ることを国民も慎みをもって受け入れられたであろう」と述べた。(8月3日付「リベルター・ディヒタル」から引用)。

しかし、現時点ではもうマドゥロ政権を打倒する以外に民主化に向かうのに選択の余地はないと見ているようだ。

これから国内危機が更に深刻になって行くと、現体制の分断を招き、マドゥロ大統領が政権を維持して行くことが困難になって来るであろう。彼が自らを救うを手段は国外に脱出することである。向かう先はトルコあたりであろう。トルコにはベネズエラで発掘した金塊をトルコに送って捌いている。

 僅か25年でベネズエラは裕福な国から貧困に喘ぐ国に変身

チャベス氏が政権についてから僅か25年でベネズエラは経済的に崩壊した。

ラテンアメリカで原油の埋蔵量ではトップの国ベネズエラであるが、社会主義による独裁体制で国は完全に崩壊した。貧困に喘ぐベネズエラでこれまで700万人が国を去っている。その一方で、独裁体制を維持すべく現在まで9400人が軍人や警察によって殺害された。今も1200人が政治犯として収監させられている。