長崎のイスラエル排除は「正義」だったのか?

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主要6カ国とEU、長崎市に書簡「イスラエル除外なら高官参加困難」

米英など主要6カ国と欧州連合(EU)の駐日大使らが、9日に平和祈念式典を開く長崎市に対し、イスラエルを招待国から除外したら「我々もハイレベル(高官)の参加が難しくなる」との書簡を7月中旬に送っていたことが7日、明らかになった。同日までに長崎市からイスラエルへの招待がなかったことから、米英の駐日大使は式典への出席見合わせを決めた。

はじめにいっておくと、ぼくはラビン暗殺後のイスラエルの政治は強権的であり、あまりにファナックであるし、ガザで多くの人道的に問題起こっている、それは非難されて当然と認識しています。

また個人的には両親は北九州の出身で、当初二発目の原爆は北九州におちるはずだった。ところが天候のせいで長崎に変更された。北九州だったらぼくは生まれていなか、放射能障害を抱えていたかもしれません。

そのうえで長崎のやったことは支持できません。極めて幼稚な観念平和主義の発露であると思います。

イスラエルのガザでの蛮行に対する抗議という意味でしょうが、ではコソボ空爆、イラク侵攻など相手に因縁をつけて、民間人まで巻き込できた米国及び欧州はなぜ招待されているのか。

また武力を背景に他国を恫喝し、実際に武力を使い、独裁国家や紛争に武器を供給し、国内でもウイグル人などを迫害して恒常的に人権侵害を行っている中国を招待することは、中国のこれらの行為を長崎は是とするのか。

国際的な批判を受けても核武装を強行したインドやパキスタンはどうなのだ?

他にも紛争で非人道的な行為を行ってきた国はありますが、招待されてきた。なぜイスラエル(そしてロシア)だけ例外的に排除するのか。その「正義」の線引はだれがおこなっているのか。ぶっちゃけ平和屋さんたちの声に押されて何も考えずに、例によって「お気持ち」や「情緒」的な平和主義を押し通しただけでしょう。

イスラエルが核武装していることは公然の秘密ですが、そのイスラエルと今後一切話し合うつもりはない、とメッセージを送ったことになります。それが「人類の願い」である非核に通じる行為なのか。むしろイスラエルのような国とこそ話し合いをしなければならないのではないか。

更に申せば、米国のユダヤロビーを敵に回したことです。正しいことをしたのだから、いくら強大な敵で戦うのだ、忖度よりも正義を選ぶのだ言うならば何も言いません。ですが、今後米国のユダヤ系メディアを敵に回して戦うことも覚悟しなければならない。これは欧州でも同じです。そして彼らは蛇以上に執念深い。彼らその覚悟はあったのか。

単に今悪いことやっているイスラエルいじめてやれ、程度の認識しかなかったのではないでしょうか。

結果として日本以外のG7は全部ボイコットです。長崎のいう、「人類の悲願」とやらは大国からはその程度のものだと認識されていた、ということです。

原爆投下という蛮行には声を荒げて抗議するもの結構ですが、日本が戦争に突入し、最後に原爆落とされたのは日本人の慢心と無責任のせいですが、それらに対する加害者としての責任に対する懺悔を彼らからあまり聞いたことはない。ひたすら自分たちは被害者だという立場です。

端的に申し上げれば折り鶴を折って核兵器や戦争がなくなると思っている人たち(その実非常に攻撃的)が世界の平和に大きく貢献できるとはぼくは思いません。

【本日の市ヶ谷の噂】
防衛省、自衛隊では軍隊に不適切な電波の周波数帯を割り振られており、それは是正されているという「設定」を吹聴しているが、それは防衛省の電波管理部門に総務省から出向者が多数配備されているから、との噂。

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
海上自衛隊の潜水艦メーカーは2社も必要あるか川重の裏金問題で注目される潜水艦の実態

月刊軍事研究8月号に防衛省、自衛隊に航空医学の専門医がいないことを書きました。
軍事研究 2024年 08 月号 

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2024年8月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。