ベストセラーとなった「1日1話、読めば心が熱くなる365人の教科書」シリーズを、中高生向けに編集してほしいという要望が寄せられたことをきっかけに誕生した本。中高生に贈りたい話題を厳選しています。
「毎週1話、読めば心がシャキッとする13歳からの生き方の教科書」(藤尾秀昭 監修)致知出版社
小学4年生で将来を決める
いまから紹介するのは、桂歌丸(落語家)のページです。個人的に噺家が好きなので取り上げてみました。小学4年生で人生を選択したことに驚きを隠せません。
「私は昭和十一年生まれですが、小学校四年生の時に噺家になろうと決意しました。戦後の何もない時代で、笑いに飢えていたわけですよ。唯一あったのがラジオ、そこで週二回くらい寄席の番組がありましてね。昭和の名人たちが聴衆をドッと笑わせている。それを聞いて、『ああ、これだな』『俺の進む道は以外にない』と思いました」(桂歌丸)
「私は三歳の時に父親を亡くし、母親とも離れて暮らしていたものですから、祖母に育てられたんですね。それで祖母に『小学校を卒業したら噺家になりたい』と言ったら、『みっともないから中学だけは行ってくれ』と。それで嫌々学校に通っていましたが、宿題もやらずに落語に夢中になっていまして」(同)
結果的に、卒業を待たず、中学3年の時に噺家になってしまう。昭和26年の11月に古今亭今匠のところに入門し、翌年から正式に落語芸術協会の会員になり、前座についた。
「その頃は前が舞台で時間調整する役をしていましたので、この人に長くやってもらいたいなと思ったら『師匠、すみません。時間がちょっと余ってますから』と言うんです。そうすると、長くやってくれますのでね。で、逆にこの人に長く乗られると終わるのが遅くなるからという場合には、こっちで時間を詰めちゃう」(桂歌丸)
オチを正しく理解する
皆さまは、オチを正しく理解しているでしょうか。物事には必ずオチがあります。たとえば、「棚から牡丹餅」も、牡丹餅が落ちてくるのを待っていても何も落ちてきません。「海老で鯛を釣る」は、少しの投資で大きな利益を得ることですが簡単ではありません。
「果報は寝て待て」も、寝ていたら果報が来るのではなく、全てをやりきったらあとは寝て待ちなさいという意味です。ことわざにはちゃんと「オチ」があることを考えましょう。ことわざの考え方は私たちにとって、ヒントを与えているのです。
中国には守株待兎ということわざがあります。株を守ってウサギを待つという、牡丹餅がウサギに変わった意味になります。農夫が狩猟もせずに休んでいたところ、ウサギが切り株にぶつかり努力をせずにウサギを仕留められたというものです。
この話にはオチがあります。翌日も農夫はウサギがぶつかることを期待して何もせずに待っていました。1カ月が過ぎたころ、農夫はウサギを得ることができないどころか、自分の田畑も荒廃させてしまいました。本来、やるべき仕事を放棄してはいけないという戒めの言葉です。
長い歴史の中で蓄積されてきた、幸せになるための教訓のことを「人生訓」と言います。運をよくしてチャンスをつかむにも覚えておきたいものです。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
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