バンクーバーで最大級のアニメイベント、Anime Revolution 略してアニレボに今年も参加しました。3度目の参戦です。参加人数はコロナ前が25000人程度でしたが、今では相当パワーアップしているので30-35000人ぐらいになっていると推定しています。各種アニメイベントが様々なホールで常時行われるため、この参加者の多くは3日間の通しチケットをもってこのイベントに全精力を注ぎこむ感じです。
我々は日本の書籍と小物のアニメグッズの販売が主力のベンダーの一つですが、様々なグッズを販売するベンダーだけ約140近くあり、すべてがアニメ関係の小売業者です。
会場はバンクーバー最大のコンベンションセンター(写真上はコンベンションセンターの外観と外に溢れている参加者)をほぼ使い切り、金曜11時から日曜5時までの3日間で特に土曜日は夜中までイベントが続くため、参加する客も体力勝負になります。
会場はアニメの仮装をした人であふれ、仮装レベルもかなり高い人が目立ちます。白人系とアジア系の比率はざっくり4:6ぐらいでしょうか?(写真下は会場の一角で行われている素人イベントの盛り上がりです)
私どもはどの出店の時でも販売テーマを決めるのですが、今年のアニレボのテーマは絞りにくく、期待した新作物のひとつが「ダンジョン飯」でしたが版元のカドカワの例のサイバートラブルで商品が十分に揃わず瞬時に売り切れでした。そのため、商品構成が多い「カードキャプターさくら」などを前面に押し出した感じでしょうか?
総評からすると財布のひもは固かった、これが第一印象です。なぜわかるか、自社の売り上げもそうですが、例年、買い物をする人が大きな箱や袋を手にして歩いているのですが、今年は最後まで手ぶらの人が多かったのです。他のベンダーさんもそれなりに見て歩くのですが、冷やかし客はいるけれど販売にはなかなかつながらない感じです。アーティスト系のベンダーさんが多く、自分の作品を売るところが30ブース以上あると思いますが、明らかに苦戦というアーティストさんも目立ちます。
一方、アニメ商品系ですとフィギュアは売れ行きが止まった感じがします。もともと価格が高いのですが、こちらではちょっとしたものでも1万円以上する価格帯になると好きな人以外は手が出ないという感じでした。
一方、変わったところではアニメの小物としてしばしば登場するアニメ用日本刀の専門店が4つ出店していました。これは過去なかったと思います。たまたま私どもの隣もその刀屋で様子をうかがっていましたが、一本7000円から1万円前後ですが、それなりに引き合いはありました。ただいつまでこの人気が続くのか私には想像の域を超えています。
アメコミ(アメリカンコミック)ではなく、ジャパンアニメのイベントなのに日本の会社の出店は私どもともう一つ着物をやっているところだけです。なんで他に出店者がいないのかと思うでしょう。例えばロスで行われる世界的規模のアニメエキスポですと日本の書店から出版社やグッズ販売会社まで参戦し、日本からも関係者が市場調査に来るぐらいです。
ではなぜバンクーバーには来ないのでしょうか?もともと日本企業は市場規模がカナダの10倍あるアメリカを目指し、市場トレンドの反応度も高い点を重視しています。もう一つは出店者は前年参加した出店者が優先となっており、新規参入の壁があるのです。
その仕組みとは2日目の午後7時から翌年分の参加申し込みが出店者に限りできます。長蛇の列に並び、翌年の出店料を前払いしてブースを確保します。もしも新規枠があれば抽選で選ばれるという仕組みです。なので日本の大会社や有名会社でも参入しにくいのです。
ではお前のところは今年はどうだったのか、と言われるとジャンルを女子/BL系、男性向けおよび一般ジャンルの3つのカテゴリーで売り場を仕分け、客がわかりやすく購入っできるようにしています。我々は男性向けはディープなオタク系の画集が強みで「こんなのカナダで絶対に手に入らない」どころか日本ではジュンク堂と同じぐらいのオタク度商品が並びます。また同人誌は別にして一般書籍を扱うのはカナダでは私どもだけですので毎年、開場と共にダッシュしてくる客も多いのです。
今年は現金払いが5割ぐらいあったことが特徴的でした。カードを使いすぎてそれなりの制限をしているのでしょうか?ある客は「dangerous zone!」つまり欲しいものがありすぎてお金がいくらあっても足りないと言い残していく客もいます。
私どもの売り場は狭いです。ただ、戦略として狭くしている部分もあります。なぜなら書籍の大半は中が見えないようにラップされています。よって立ち読みができるわけではなく、タイトルだけで購入を判断してもらうのですが、混んでいる中、在庫が数冊しかないものもばかりなので私が「今買わないとなくなっちゃうよ」とそっと囁くのです。悪魔のささやきです。なのですぐに決める客も多いのです。
正直、この手の小売りは体力勝負。毎日足が棒のようになりながら帰宅しますが、客相手の商売って楽しいですよね。だって怒って帰る客はいないですから。みんな楽しんで喜んでお帰りになる。これは商売をする人にとって至福の時だとおもいます。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年8月13日の記事より転載させていただきました。