シニアコンサルタント 橋本 潤也
1on1ミーティングは多くの企業で導入されていますが、その効果を最大限に引き出すためには注意点を理解し、適切に運営することが不可欠です。
本記事では、1on1ミーティングに潜む3つの主要な落とし穴について解説し、社長や管理職が1on1を効果的に行うための具体的な対策を提案します。
弊害1: 部下の個人的な考えが戦略実現に繋がらない
1on1ミーティングの一つの目的は、業務に集中できる環境を整えることです。しかし、部下の話には会社や社員に対する不平不満や、上司の権限では解決できない問題が含まれることが多く、これらの話を聞くだけでは生産的なミーティングとは言えません。
【部下のパーソナルな事情や、要求を聞く1on1は必要か】
ご時世柄もあり、もっと部下のパーソナルな部分を知るべき、部下の話しや要求を上司はもっと聞かなければならない、こんな考えをお持ちの社長や管理職も多いのではないでしょうか。全否定する訳ではないですが、部下の業績や仕事にフォーカスせずに、耳障りの良い上記のような話を1on1で頻繁に行う弊害は思いのほか大きいです。
部下の個人的な事情を聞けば聞くほど、仕事に対する様々な言い訳や過大な要求に繋がりやすく、1on1の場で上司に何でも言えば、要求を飲んでくれたり、出来ない言い訳が通用すると部下が錯覚を起こすリスクがあります。
【具体例と改善策】
例えば、部下が「部署間のやりとりがうまくいっていない」と不満を述べた場合、上司としてはその問題を解決するために具体的なアクションを取ることが求められます。しかし、ただの不満を聞き流してしまうと、ミーティングの時間が無駄になってしまいます。
改善策として、ミーティングの目的を「権限の確認」や「業績の報告」に限定し、感情的な情報や噂話に関わらないことが重要です。
弊害2:部下が自発的に考えなくなる
1on1ミーティングで親身に相談に乗りすぎると、部下は自分で考えることを止め、上司に依存するようになります。これにより、部下の自発的な問題解決能力が低下し、長期的には組織全体のパフォーマンスにも悪影響を及ぼします。
【部下のやり方に介入しない】
上司は部下に対して具体的な目標やタスクを設定した後は、そのやり方(経過)への介入を避けることが求められます。経過に介入する事で、自分で考えない、上司の介入を言い訳にする等、部下の成長を阻害する要素を上司自ら作ってしまう事になります。
部下が問題を解決するために自分で考え、自走して学ぶ環境を整えることが重要です。具体的には、部下の相談には基本的に乗らず、業績や進捗の報告に焦点を当て、部下の権限の範囲の仕事については部下に責任を持って実行させ、部下の自立を促します。
【具体的なフレーム】
1on1の具体的な内容については、その場面に応じて変わって問題ありませんが、推奨しているテーマはあくまで部下の責任(目標)を果たすためのミーティングです。
例えば以下のようなフレームでまず部下が上司に報告し、上司は確認し承認/不足があればフィードバックを行う。そして部下は責任を果たすための権限の上申や疑問の解消を行う。
このようにあくまで部下の成長管理に焦点を当てたミーティングが出来れば、会話のテーマが不要に散らばらず、生産的な1on1になるはずです。
- 結果(目標の確認)
- 現状、不足の明確化
- 不足に対する行動変化
- 次の約束
- 欲しい権限(責任を果たすための)
弊害3:拘束時間が長すぎる
【長時間のミーティングがもたらす弊害】
1on1ミーティングが長時間にわたると、上司と部下双方の生産性が低下します。特に多くの部下を抱える上司にとって、1on1ミーティングの時間は大きな負担となり、他の重要な業務に割く時間が減少します。
【時間効率を上げるための工夫】
ミーティングの時間を効率的に使うためには、テーマを事前に決め、要点を端的に話し合うことが必要です。また、定期的な事実報告や定例会議で代替することも検討すべきです。
例えば、週1回の事実確認と意思決定を行うだけで、限られたリソースを効率的に活用できます。また、部下の気持ちや感情を理解しようとするのではなく、上記で解説した通り具体的な業績報告や権限確認に焦点を当てることで、ミーティングの効果を最大化できます。
具体的には、1on1ミーティングの前にアジェンダを共有し、各議題に対する時間配分を明確にします。また、タイムキーパーを設けて、時間内に議題を終えるように努めます。さらに、ミーティング終了後には次回のアジェンダを確認し、実行の約束をして終えていく要領です。
実行例:効果的な1on1ミーティングの実施方法
【目的の明確化】
1on1ミーティングの効果を高めるためには、その目的を明確にすることが重要です。ミーティングを通じて達成したい目標や期待される成果を具体的に設定し、それに基づいて議題を決定します。
【ミーティングの構造化】
業績/目標達成の進捗と次回アクションの1on1、何かを決める為の1on1、アイデア出しの1o1、目的の種類はいくつかありますが、それほど多くの種類はないはずなので、ある程度のフォーマット化が可能です。
業績/目標達成の進捗の内容であれば、上記で例を記載しましたが、チームで同様のフォーマットを使いそれに基づき1on1を実施出来れば、毎度準備の工数もかからず、効果的な実施が出来るはずです。
【アクションプランの明確化と実施管理】
なんとなく話して時間が来たからなんとなく終える、そんな1on1も世の中横行していますが、外してはならないのはアクションプランの決定です。そのアクションの「期限」と、どこまでやればOKなのか「状態」を決定して、その約束でミーティングを終える事を実行したいです。また上司-部下間であれば、そのアクションプランが期限までに実行出来ているかも併せて管理頂く事が必要です。
まとめ
1on1ミーティングを効果的に実施するためには、その目的を明確にし、部下の成長と業績向上に直結する内容に焦点を当てることが重要です。感情的な話題や噂話を避け、具体的な業績報告や権限確認に徹することで、ミーティングの効果を最大化できます。
また1on1をする際のフォーマットやルールを予め設定する事で、不要なロスタイムの無い効果的な1on1になるはずです。