岸田首相の「任期満了」:品格がない野党が政治を停滞させた1000日間

岡本 裕明

メディアは「岸田首相総裁選不出馬」と報じています。もちろんその通りなのですが、個人的には「賞味期限到来による任期満了」とした方が理解がスッキリすると思います。任期中何度も噂のあった解散総選挙を一度も実行せず、ひたすら首相としての日々の責務を全うした努力は評価するべきでしょう。一部からは「不出馬は当然だ!」という声もありますが、それは日本人のマインドとして失礼千万だと思います。

岸田首相 首相官邸HPより

岸田氏の不評とは企業の不祥事で社長がフラッシュがたかれる中、頭を下げる話と似ています。つまり岸田氏が何かやらかしたわけではなく、自民党総裁としての立場において党議員が次から次へと不祥事を引き起こし、その度に「頭を下げ続けた」、そんな責任の取り方であり、岸田氏がイキイキと力を発揮できたのは外遊しているときぐらいだったと思います。

お前は岸田氏に責任がないといえるのか、と聞かれればそれは日本的なウェットな思考方法と言い返すしかないのです。海外でそんな頭の下げ方はあまりお見掛けしないです。逆にそれに時間を割かれるので政権運営という重要な責務を果たす集中力を欠くことになるのです。ところが日本は国会で野党がねちねちとつまらないことで与党を攻めるのがお好きです。立憲という品格がない野党が逆に政治を停滞させている、そう感じるのです。まずは岸田首相に在任約1000日間、ご苦労様と申し上げます。

さて、この先についてメディアが明白な予想を出しているところはあまりお見掛けしません。それぐらい難しいし、誰が出馬するのか、そしてどのような党内の駆け引きが行われるのか、見えない力も加わることから軽はずみなことは言えないのでしょう。

お前はどう思うのか、と聞かれた場合、政治を再度、俯瞰する必要があるのかと思います。

  1. 日本は中道のやや左を求めるのか、やや右を求めるのか?
  2. 日本は政治に何を期待しているのか?
  3. 日本はまだ自民党に期待をしているのか?
  4. 国民との対話が上手なのは誰か?
  5. 内政と外交、実質的にどちらが重要になるのか?
  6. アメリカの新大統領と組み、習近平と交渉できるのは誰か?

あくまでも個人的な意見を述べさせていただくと日本は全般に中道やや左は居心地が良い、そんな感じに見えます。日本が世界で最も成功した独特の社会主義(日本型社会主義)と指摘される中で内政と外交の二面性を見せてきたのが歴史だと思います。国内は中道、外交は保守です。この絶妙な使い分けが意図的にできる人がいるかどうか、です。

日本人は政治家に対する期待感は第三者的であり、自分たちの代表という意識は薄いと思います。言い換えれば政治と日々の生活を切り離しても一定の満足がある、だからデモもストライキも起きないのです。小池百合子氏が大きな改革をしない東京都で鎮座し続けるのと近いものがあると考えています。こうなると外交手腕のあるなしが首相の器の一つの決め手になるかもしれません。

自民党への期待感は薄れていると思います。まだ君臨しているのか、ぐらいの感覚です。何度も繰り返しますが自民党は割ればよかったのです。ところが古い世代にはその意味するところが理解できないし「お前はバカか?」というスタンスです。ですが自民党はバブル崩壊の90年代初頭で実質的な役割は終えていたと考えています。具体的には金丸信元副総裁が逮捕された93年が一つの終わりの象徴だったと思います。

国民との対話上手という点では岸田氏は悪くなかったと思います。一部ではそれを酷評する人もいるようですが、岸田氏は他の首相経験者と違い、威圧感がなかったのです。例えば菅氏は人のよさそうな感じがしますが、腹黒さで誰もそばに寄りたくなかったと思います。岸田氏は貫禄がなかったとも言えますが、話しやすさ、国民がアプローチしやすい点は継承されるべきでしょう。

内政と外交ですが、内政は既存の組織と壁があるのです。閣僚と官僚、更に野党と国民が取り巻くがんじがらめの世界であります。現在の首相候補者に壁を打ち砕ける人材はいないので逆に党内での人徳と人脈がある人がよりスムーズな政権運営をすることができるでしょう。

最後、アメリカの新大統領とタッグマッチを組み、習近平氏から小僧扱いされない貫禄となるとさて、難しいですね。求めすぎかもしれません。

自民党総裁選挙は党員、党友、及び議員票ですので世論とは次元が違うところで決まります。議員票を集めやすいのは茂木さん。ただ、党員党友では人気がありません。高市さん、石破さん、河野さんはその真逆。かなり根拠薄ですが、今、答えろ、と言われればえぇッと驚かれるかもしれませんが、石破氏と茂木氏の決戦になるような気がします。高市さんを推す声があるのは知っていますが、私には過大評価の気がします。首相として重圧に耐えられるでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年8月15日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。