パワハラを受けて得た3つ学び

黒坂岳央です。

取り扱いを間違えると炎上記事になる記事タイトルであるため、冒頭に注意事項を書く。

  • 自分はパワハラを肯定する意図は全くない。パワハラは憎むべき犯罪行為である(傷害罪・暴行罪・名誉毀損罪に該当)。
  • 自分は人生でパワハラに抵触する行為を人生で一度もしたことがないし、今後も一生することは絶対にない。

上記を踏まえ、自分が過去にパワハラを受けた経験からポジティブに解釈をした部分を言語化するとともに、現在・過去の時間軸でパワハラに苦しむ人へ何からの気付きや精神的救済につながればという意図で本稿は書かれた。

Drouk/iStock

話し合いができない人がいる

自分はバイト、派遣時代を含めると家族経営でワンマン社長、中小企業企業から、東証一部上場企業まで幅広い会社でいろんな仕事を経験してきた。

灰皿をフリスビーのように投げられたり、分厚い資料のバインダーを叩きつけられたり、終電がなくなるまで会議室に監禁されて上司はタクシーで帰った後、始発まで会議室の椅子を集めて眠ったこともあった。

そんなパワハラを受けた筆者が得た知見の1つ目は「世の中には話し合いが通じない人がいる」ということだ。普通に口で説明すればいいことを暴力でわからせようとする人がいる。高校卒業までそういう人は割と多かったのだが、「まさかネクタイを絞めてビジネススーツを着た人が働くオフィスではいないだろう」と考えていたがそんなことはない。広告、金融業界経験者も似たような体験をする人は比較的多いようだ。

自分がこの経験から学んだのは「会話が通じない人とは関わらないで済むビジネス力をつけよう」ということである。資格を取ってスキルアップして、コンプライアンス体制がしっかりした会社で働くことでそうした人たちはほぼいなくなった。ちなみにこれには言語化能力(偏差値)と暴力性は逆相関関係があるというデータがあり、言葉が通じない苛立ちが暴力に出てしまうという状況証拠が存在する。

この経験は今でも役立っていて、自分はネットで煽られたり侮辱するコメントがついても、怒って応酬せずに、一切反応しない人格を得ることができた。限られた時間やメンタルのリソースは自分を応援してくれる人や、真に手を差し伸べたくなる人へ使うべきである。

厳しさに慣れる

昨今、「厳しい会社、厳しい人と働きたくない」という意見をよく見る。自分は職人気質の非常に厳しい上司と仕事をしていた時期があったのでこの気持ちはよく分かる。

自分が過去に経験した上司は仕事の結果に非常に厳しいだけでなく、時にはバインダーを机にバシンと叩きつけて大声で怒鳴る恫喝もあった。今なら完全にパワハラである。最初の頃はそれをされるたびに、氷の手で心臓を鷲掴みされるような恐怖を感じた。

しかし、3ヶ月、半年も経過すると段々と恫喝にも慣れてくる。さすがに威嚇はしても直接殴るまでのことはしてこないので、「普通に口頭で説明してもらえば理解できますよ」と自分は生意気に言い返すようになったものである。同僚との飲み会でキレる上司のモノマネをして、笑いを取るほどに耐性がついた。

こうした厳しい仕事に慣れると、その後の人生でどれだけ厳しい人を相手にしてもまったく動じなくなる。激しく声を荒げられても(普通の音量で話してもらっても十分聞こえるよ)という落ち着いた対応ができるし、感情的に来られれば来られるほど逆にこちらは氷のように冷静な感覚になっていく。

おそらくこれは過去のパワハラ経験から、感情的な相手が最も苦手なのはその対極の理性的な相手であることを肌感覚的に体得したためだ。感情的に来る人は、相手も同じように感情的になってほしいという願望を持っている。だが、そこで相手に乗せられたら負けである。一方的に怒り続けることは不可能なので、冷静に淡々と対応する方が最後には必ず勝つのだ。

反骨精神が育つ

最後は「負けてたまるか」という反骨精神が育つ。パワハラ上司はお世辞にも尊敬できる人格の持ち主とは言えない。人間関係におけるリスペクトがなく、正直暴力でストレス解消をしているだけと感じる人もいた。

そんな尊敬できない人から罵声を浴びせられたら、必然的に反骨精神が育ってくる。「こんな人間に負けてたまるか。仕事で圧倒的に差をつけて見返してやる」という気持ちになるのだ。負けたくなくて休日出勤や早朝に出勤して仕事を頑張ったことでビジネススキルが育っていった。そうなれば段々、相手に文句を言わせないようになってくる。最後はもう何もいってこなくなった上司もいて、だがビジネススキルはそのまま残り続けるので「殴られっぱなし」で終わらせなかったことは良かったと思っている。

相手が立場の強さを利用して不当に暴力的支配をしてくるのに対して、同じように暴力で返すのでは能が無い。文句を言わせないレベルに仕事で結果を出してやれば、相手も何も言えなくなる。

それまでは「会社は上司や先輩が責任を持って自分の子供のように部下を育てる義務がある」と甘く考えていた瞬間もあったが、良くも悪くもそんな甘さを消して必死に頑張れたのは振り返ると良かったと思っている。

繰り返すがパワハラは犯罪であり、いかなる立場、文脈であろうとも肯定されることはあり得ない。しかし、「辛かった。苦しかった」で終わらせるのも悔しい。せっかく苦しんだなら、そこから1つでも学び、教訓を得たり強さに繋げて転んでも手に掴んで立ち上がりたい。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。