メディアは10名を超える自民党総裁選候補者の行方に振り回されていますが、こればかりはふたを開けてみないとどうにもわからない、そんな気がしています。それぞれの御贔屓の政治家を押したいのか、インフルエンサーがあぁでもない、こうでもないといろいろ書き立てますが、一種のファン投票的な話で冷静に中立的にとらえたものはあまりありません。
それと各候補者が次々と推薦人20名をクリアしつつありますが、これは自民党がすっかり割れていることを対外的に公表しているようなものだと思います。私を含め多くの方は11名出馬の意向を示していても実際に推薦人の枠を考えれば最終的に5-6名になるのでは、と思っていましたが、現状それより若干多めで展開しそうです。それだけ票が割れるということですが、党員党友の票が読みにくく、案外、保守的な展開になるとみています。
ところで話題になっているThe Matchという自民党総裁選のポスターと動画ですが、批判的な意見も多いようです。私は一目見た時、残念なものを作ったな、と思い、これがAIを利用して作ったと聞いた時、「そうか、AIはやっぱり過去を踏襲するしかできないのだな。今の自民党が変われないことを象徴しているような作品だ」と勝手に納得しておりました。
何が残念かいえばポスターのトーンが過去の栄光にぶら下がっていること、様々な不正や疑惑に対する反省がデザインに全く取り入れられていないこと、そして最大の欠陥は「なんで全員年配の男なんだ!」という点です。過去首相をやった人の顔写真が任期に応じて大きさを変えているという手法を使っているために極めて偏りのある現代社会にマッチしないものができた、これを平井卓也広報本部長が素晴らしいものができた、と自画自賛している点でやっぱり自民党は過去の産物ではないか、という気がしてしまうのです。
さて、タイトルの「選挙は自民総裁選だけじゃないぞー」は2つの選挙を指しています。1つは自民総裁選の数日前に行われる立憲民主党の党首選、もう1つは来年の早い時期に行われると勝手に予想している衆議院選挙であります。
まず、立憲の党首選ですが、現状、3名の候補に絞られているようです。現職の泉健太氏、前職の枝野幸男氏、そして元総理の野田佳彦氏です。8月24,25日の毎日新聞の調査で立憲支持層の支持率は枝野氏37%、野田氏32%、泉氏6%なのでほぼ、枝野、野田両名に絞られているとみています。これは2か月ぐらい前の本ブログで野田-枝野の戦いになるのでは、との予想と一致です。泉氏は新味がない、功績も主張も限定的で再選はないと考えています。
それより更に1-2か月前のブログで枝野氏の返り咲きがあり得ると申し上げたのですが、その時は野田氏の登板を想定していませんでした。直近の流れからして野田氏は大いにあり得る、いや、むしろ野田氏が最終的に党首になるような気がしています。とすれば、これは自民党にとっては極めて厄介な事態になると踏んでいます。
なぜなら民主党時代の3人の首相の中で野田氏だけはまともだったこと、安倍元首相が認める政治家としての好敵手であり、ライバルでもあり、印象的なカウンターパートであったことを考えると自民の約11名の候補者を含め「近い将来の首相は誰が良いか」と国民に問えば案外、いい位置につける候補者ではないかとみています。
衆議院の解散総選挙はあるか、と聞かれればハネムーン期間の100日を考えると今年はないのですが、2025年の早い時期に次期首相は解散総選挙をやらざるを得ない状況に追い込まれるでしょう。国民の信任、及び仮に「野田人気」が盛り上がれば解散して決着をつけるというプロセスは避けて通れないからです。まさに「野田リベンジ」ということになります。
自民党は野田佳彦氏に勝てる人材を自民党総裁選で選べるか、ここまで考える必要があります。その間にアメリカ大統領選もあります。こちらも正直誰が大統領になるかふたを開けてみるまで分かりません。が、衆議院選挙で外交は主題にならないので、国政をいかにぐいぐい引っ張れるか、これにかかるのです。11名の候補者にこのような人物はいますかねぇ?なかなかの難問です。
自民党党員と党友及び議員はそこまで考えたうえで誰を推すべきか計算づくの選挙戦を展開すべきでしょう。仮に20人の推薦人をもらっても勇気ある辞退者が出ることはウェルカムです。今回の自民総裁選は相当神経質に行わないと政権交代が現実味を帯びる、そんな気がします。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年8月27日の記事より転載させていただきました。