スペインの経済低迷の裏側:サンチェス首相の政策が招いた災禍

社会労働党を私党化させたサンチェス首相

2018年に政権に就いた社会労働党のサンチェス首相であるが、最初は極左のポデーモスと連立政権、そのあとポデーモスから分離した同じく共産主義思想のスマールと連立しての政権維持。今ではサンチェス首相政権は共産主義思想に多大の影響を受けた政治になっている。

ところが、首相であり続けたいという私欲から首班指名でバスクとカタルーニャの独立派政党の支持票を味方にした。だからスペインの発展のための政治ができなくなっている。なぜなら独立派政党はスペインから独立を望んでいる政党だ。彼らはバスクとカタルーニャの発展のための要求はするが、彼らからスペインの発展の為の協力は期待できない。

元々、サンチェス氏は政治家として全ての面で凡庸である。スペインの民主化以降は国民党と交互に政権を担って来た社会労働党という歴史ある政党であるが、彼はそれを私党化させてしまった。現在の社会労働党はペドロ・サンチェス党である。彼に従わない議員は差別されることを覚悟せねばならない。

首相でありたいという私欲から国が犠牲になっている

もう今年下半期に入っているのに、今も政府は今年の予算の議会承認が得られない状態が続いている。国家予算なしで国の計画的な発展など望めない。しかし、サンチェス氏にはそんなことはどうでも良いこと。常に政権を掌握して首相でいれば国の経済が後退しようが、彼には気にならないのである。スペインにとって最悪の首相を選らんだものである。

実際、2018年にサンチェス氏が首相に就いてから4年間に3万社が姿を消した。その多くが零細企業である。

スペインの企業の99%は中小企業である。その多くが零細企業。2019年のcovidのパンデミック以降、スペインの企業の立ち直りは皆無である。その中でも問題は零細企業が危機に勝ち抜くための優遇策に欠けるということ。例えば、税金が下がることはない。共産主義化した政府は税率を上げることに一生懸命だ。

フランスとの国境にある総合病院はフランス人も利用している。彼らフランス人に、病院を利用するのであるから税金を払えとサンチェス政権は要求している。このようなことをこれまでのスペイン政権が要求することなど全くなかった。

しかも、銀行やエネルギー企業には特別税さえある。これは企業を弱体化させるものである。が、政府はそれを解除しようとしない。だから、一般に企業家はサンチェス政権への信頼はゼロである。多くの経営者がサンチェス首相よりも悪い首相はこれまで存在しなかったとしている。

彼の政権下で国の負債は増加し、GDPの100%を超えた。18歳未満の35%の若者が貧困層に陥る可能性が出ている。彼が首相に成る前の2018年はそれが30%であった。彼にはこのような深刻な社会問題の解決は二の次である。首相でいるということが彼にとって一番重要なことなのである。

サンチェス首相インスタグラムより

多くの国民も企業も政権の交代を望んでいる

多くの国民や企業は政権の交代を望んでいる。しかし、政権にしがみつくサンチェス氏は皮肉にもスペインから独立を望む政党からの支持を味方にして過半数の議席を確保して政権を維持し、それにしがみついている。その為に、サンチェス首相は独立派政党へ権利の譲歩などを余儀なくさせられている。それは逆にスペイン全体の発展にとってマイナスであるが、政権にしがみつく彼にとってそれは二の次である。

だから、それが顕著にあらわれているのが企業経済である。昨年だとスペインで倒産または廃業した企業の数は9137社。2019年のパンデミックの年の3942社に比較して2倍強の企業の消滅である。これなどは政府が企業の回復のための政策を実行して来なかったという表れである。投資についても2019年と比較して2%少ない状態にある。(6月9日付「ボスポプリ」から引用)。

サンチェス政権が今後も続く限り、スペインの成長は望めない。