「感情と心の距離」を理解して人間関係を改善しよう

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距離を置きたいママ友、好かれなくてもいいが、嫌われたくもない上司……人間関係は、「自分と相手との心の距離」によって 取るべきコミュニケーション方法が変わります。

感情のメッセージに気づくと、人間関係はうまくいく」(神谷海帆 著)三笠書房

 大切なことは「感情と心の距離」である

人が悩んでいるとき、何が起きているのだろうか?神谷さんは次のように言います。

「多くの場合、『そうしなければならない』『そうであって欲しい』理想とは、異なってしまっている現実が目の前で起きています。そのために、複数のネガティブな感情が絡み合って、混乱してしまうのです。ときには、自分ではコントロールできない『悩まなくてもいい問題』や『悩んでも仕方がない』問題もあるでしょう」(神谷さん)

「それでも人が悩むのを止められないのは、冷静に考えればすぐにわかることなのですが、 感情が物事を複雑にしているのです。さらに、人が苦しむ理由のひとつに『湧いてくる感情を否定する』苦しみがあります。自分のブラックな本心の存在が思考と気持ちの不一致を生み出し、感情が揺さぶられて翻弄されるのです」(同)

こうした悩みを解決するポイントは、「相手との関係の現実」を把握することである。客観的な視点から、現実と自分の気持ちとのギャップを知ることが可能になる。

「『いろいろがんばっているのに、うまくいかない』、そんなときは、自分の能力が低いせいだと誤解しがちです。しかし実際はそんなことはありません。ただ、あなたの気持ちと状況に合った、適切な対処法や解決法を知らないだけなのです。人間関係を改善するのに必要なこと。それは、『心の距離』を知ることです」(神谷さん)

人間観察をしてみよう

アメリカで行われているEQの訓練の一つに『エモーショナルーポーカー』というゲームがある。これはトランプの代わりにいろいろな人の顔写真が印刷されたカードを使い、その表情から同じ感情と思われるカードを選別するポーカーゲームのこと。週刊誌などに載っている人の表情を見て、どんな感情なのかを推測してみても同様の効果がある。

写真などの表情を見て、どんな感情を表しているかが判断できるようになったら、職場での実践が効果的である。ある程度理解できれば、上司の機嫌が悪いときに声をかけるようなミスをしなくなるだろう。職場の同僚や上司が、どのような感情のときにどんな表情になるかを知ることは、相手にどう対応するかの実践につながる。

「部長は課長のことが好きではないな」「人事部の涼子さんは上司と怪しいな」「新人の鈴木さんは愛想がいいがストレスフルだな」といったことがなんとなくわかるようになる。行動する前に人を見ることの重要性に気がつくはずである。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

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