日本のエネルギー源は再考すべきか?:今後の展開が悩ましい技術たち

この数日だけでもエネルギー源に関するニュースがいくつか報じられています。

  • 東電柏崎原発、6-7号機再稼働後、2年以内に1-5号機の一部廃炉の検討
  • 日本の沿岸部での洋上風力発電に外資が次々参入、洋上発電は今後大きな市場に発達する
  • 中国製太陽光パネルが市場を席巻、一路一帯でも脱炭素事業を推進及び普及加速

エネルギーミックス、つまり国家が必要とするエネルギーに関してどのエネルギー源をどう組み合わせるかはなかなか難しい問いだと思います。特に太陽光発電や風力発電、少しずつ出てきた地熱やバイオマスはまだこれから技術の進歩が期待できます。また忌み嫌われている石炭については日本が主導し、アンモニアとの混焼の実証実験が進みます。

何故我々はエネルギーに関心があるのでしょうか?

Jeremy Poland/iStock

1970年代、原油は有限であり、〇十年のうちに枯渇すると言った研究者の話がまことしやかに流布し、当時は代替燃料の選択肢があまりなかったために原油価格の高騰を招き、またサウジなどは政争の具とするなど市場の需給による自動的価格決定とは違う歪んだ相場を作り出したことは事実でしょう。

その為、例えば日本の自動車メーカーが80年代にこぞって目指したのは燃費重視。リッター何キロ走るという宣伝が新聞広告を飾り、消費者は〇キロも走るならこっちがいいな、といった話が茶の間の話題にもなりました。

その後、降ってわいたのが地球温暖化問題。「降ってわいた」というのは実は正しくなく、温暖化問題は産業革命の頃からだとか、石油が本格的に世界で消費され始めた20世紀半ばから専門家は様々な定義をつけています。一般的認識としては2015年の「持続可能な世界を実現するSDG‘s」が国連で採択されたこと、その頃からとみに感じるようになった異常気象で、多くの国民が「何か変だ!」と感じるようになったことがあるでしょう。

経済界はそれを受け、脱炭素をビジネスの新しいチャレンジの項目に加えました。電気自動車はその端的な例だし、小型原子炉は東日本大震災を踏まえて既存原発の脆弱性を補う代替として開発されつつあります。

ところがこの1-2年、電気自動車には逆風が吹き始め、もろ手を挙げて推進した様相から選択の時代になり、一部車種のEV開発中断を発表したフォードやGMとサムスンのEV電池工場の稼働延期といったニュースが散見できます。言い方を変えると、アーリーアダプターからアーリーマジョリティへのマーケティングセグメントの移行に苦心していると言えます。マーケティング上、最も先に飛びつくイノベーターとアーリーアダプターの市場占有率は16%程度とされています。よって先進国で一定のEVインフラが整備されている市場を参照すれば今のEV市場はばらつきはありますが、ざっくりそのあたりで足踏みになっていると言えます。

踊り場のEV PlargueDoctor/iStock

太陽光発電も正直、今後の展開は悩ましい気がします。陽が出ている時しか発電できない、だけど基本的に貯めておくことが出来ないという中でどうバランスを取っていくのか苦慮してる、そんな様子も見て取れます。

一部では蓄電をさらに推し進めるという見方もあります。テスラ社では会社の主軸をEV自動車から蓄電ビジネスに移行するのではないか、という噂も一時期ありました。多分、電池の蓄電技術の推進を更に推し進めるべく知恵を絞っていると察します。一方の日本では蓄電は悪なのか、電力会社と政府の結託なのか、さっぱり良い話を聞かず、東京ガスのエネファームもあまり目立たず、性能的にも制約を受けた事業展開になっていると理解しています。

個人的には蓄電は今後、確実に主導されるビジネスになるとみています。流れるものを需給に合わせて調整するという神の手のような技に頼っていることが閉鎖的技術ともいえ、蓄電ができることで電源エネルギーは根本的に大きく変わるとみています。

では、その燃料でありますが、太陽光や風力といった自然エネルギーでもよいですが、基本は天然ガスが当面は主軸になると考えています。多くの方は案外気がついていないかもしれませんが、日本の電源の燃料源は天然ガスが34%程度で1番です。2番目が石炭で31%程度、石油は8%強で太陽光の9%より少なく、水力とほぼ変わらないレベルなのです。

天然ガスは石油に代わる燃料源としては環境問題も含め、受け入れやすいでしょう。また再生エネルギーの比率が上昇すればエネルギーミックスが今より更にバランスのとれたものになり、一つの燃料源に偏らなければ枯渇までの想定年数は伸びることになります。それでも天然ガスも有限であり、今の使用量から算出すれば概ね原油と同じ50年程度とされますので、その間にエネルギー源の再構築をする、これが流れになると思います。

当面天然ガスにシフトしながらも石炭のアンモニア混焼や地熱、バイオマスを含め更なる代替エネルギー源の開発の努力を行いながら欧米の石炭悪の思想をどこかで修正させることも重要でしょう。

では最後に原発ですが、各国の政治的判断になりますが、今の原発方式は耐久年数を超えた後の後処理計画が不十分なままであり、安全対策やコスト面も含め相当困難で割に合わなくなるとみています。日本も政治的推進をしても新設と廃炉コストまで踏まえた経済計算をすれば既存方式ではもう出来ないだろうとみています。

小型原発は既存原発のデメリットを改善した画期的なものとされますが、もう少し市場での評価を待たないと我々素人にはなかなか判断しにくいものがあるかと思います。ただ、それ以上に蓄電技術を完成させることが最重要課題であり、本来であれば国を挙げて推し進めるべきものです。ただ、何処の国も既得権との兼ね合いで上手く展開していません。その点、アウトロー的なテスラ社が推し進めるならブレイクスルーになる可能性はあります。

それこそマスク氏がトランプ氏と近い関係となった今、トランプ大統領登場になれば国を挙げて推し進める大転換が起きないとも限りません。

世の中の技術は単なる技術力だけではなく、もっとドロドロした政治やビジネスの駆け引きが水面下で展開される中で誰かが飛び出すということなのでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年8月29日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。