河野太郎氏が「金銭解雇」導入について言及
総裁候補に名乗りをあげている河野太郎氏が、金銭解雇の導入を含む解雇規制の緩和について言及しています。
私はこれは日本の成長に不可欠であると考えており、強く賛成の立場です。
これまで労働組合を始めとする多くの団体が反対してきたこともあり、与野党問わずこの課題に正面から向きあう政治家・政党の存在は極めて希少でした。
「日本の解雇規制はOECD諸国等と比べても強くない」
「解雇規制の強弱と経済成長・賃上げに関係はそれほどない」
などの主張も見られますが、確かに「実定法」で見れば日本の解雇規制は強くない(労働法では30日前までに予告すれば解雇できる、契約自由が定められている)ため、そういう結論を導く識者もいます。
しかしながら、日本の実態としては、裁判所が「整理解雇の4要件」などを判例として解雇に対して極めて厳しい態度を取るため、事実上、企業側から解雇することが極めて困難になっています。
なので「解雇規制の緩和」が意味するところは、労働法を変えるということではなく、「金銭解雇をきちんと制度化する」ということに尽きます。
河野太郎氏はこの点をわかってて発言されているように思えるので、少なくともこの論点については、総裁候補としての河野太郎氏を高く評価したいと思います。
「現役世代の社会保険料負担軽減」「支援金」についても言及
初手から攻め続ける河野太郎氏が、ついに総裁選のメインイシューの一つとして「高すぎる社会保険料」について俎上に載せました。
現役世代が支払う社会保険料から、多額のお金が高齢者医療制度のために「仕送り」されている支援金制度に触れるという、自民党議員としては画期的な姿勢で、問題意識は完全に共有します。
高齢者の医療費窓口負担がほぼ9割引に据え置かれつつ、それが現役世代からの「仕送り」によっていびつに支えられている構造は、現役世代から高齢者世代への誤った所得移転が起きているということにほかなりません。
社会保険料は税と違って引き上げられやすいために、現役世代が一方的に負担を負わされ続け、リスクを分け合う「保険」として機能せず若者への「課税」になっているという指摘も正しい。
ただ一方で河野太郎氏は
>中小企業などの賃上げの原資を生み出すためにも、現役世代の負担が過剰とならないよう、高齢者の世代内での助け合いを今以上に深めていく必要があります。
と述べつつも、まだその具体的な方針・制度設計については明らかにしていません。
若い世代の保険料を下げようとするならば、
・高齢者の負担(窓口支払いや保険料)を増やす
・給付(過度な医療サービス)を減らす
・あるいは保険制度はやめて税を投入する
など、大きなオプションとしてできることは限られます。
日本維新の会は医療制度改革案「医療維新」の中で
・窓口負担や高額医療費制度を適正化し、年齢にかかわらず資力のある方には負担をお願いしつつ
・保険数理が崩壊した高齢者医療制度そのものを見直しながら、税財源化することで膨張を抑止する(保険料のようになし崩し的に引き上げられるのを防ぐ)
という、いわばハイブリッド案を提案しているところですが、これ以外にも制度設計案はあるはずです。
河野太郎氏には総裁選の中で、ぜひ具体的な方針や制度を明らかにしながら、社会保険料の引き下げ・社会保障制度改革を正面からアジェンダとして掲げ続け、他の総裁候補者の考えを引き出してほしいと思います。
また、社会保障制度改革で「第三の道」を目指すと公言している小林鷹之氏や、他の総裁候補からも積極的な提案がなされることを期待しています。
維新も負けずに「医療維新」と「現役世代の社会保険料負担軽減」の旗を高らかに掲げ続けていく所存です。
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ただ、河野太郎さんは前回の総裁選挙でも年金改革をぶち上げ、残念ながら尻すぼみになった経緯があります。
今回は総裁選の論争の中でも一歩も引かず、ぜひ他の総裁候補が労働市場の流動化・金銭解雇の導入についてどのようなスタンスを持っているのかを、白日の元に晒していただけることを強く期待する次第です。
編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2024年9月1日、2日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。