FIRE増加で人手不足とインフレが深刻化する

黒坂岳央です。

みずほリサーチ&テクノロジーズから衝撃的な発表があった。FIRE志望者が増加することで、人手不足とインフレが深刻になるというものである。

我が国は未婚の単身者が急増しており、単身者は育児や遺産相続が必要なく、それにより多くの資金準備が不要なために早期で労働市場から抜け出してしまうという指摘だ。

経産省が出す「今後の日本の労働不足はシニアの労働で賄える」という予測に冷水を浴びせるようなレポートに感じる。今後、FIREの増加で我が国の労働力はどうなるのか?

筆者は経済学者ではなく、単なるビジネスマンに過ぎないが個人的な予想を取り上げたい。

monzenmachi/iStock

FIREの難易度は上がる

今後、仮にますますFIRE志望者が増え、労働市場から抜け出す人が増加すればどうなるのか?まず企業は人手不足解消のために、高い賃金を提示する必要にかられる。高い賃金を回収するには当然、売価を上げて原資にする必要があるのでインフレになる。今後の未来予想は一つ、アメリカから学べると思っている。同国では人手不足ではなく、耐えきれないほどの賃金インフレに見舞われたことでファーストフード店などで無人店舗が増加した。同じことが起きる可能性は否定できない。

仮にインフレになれば株や不動産などの資産に上昇圧力がかかるので、投資家はますます富む一方で、資産を持たない層や年金生活者は生活が苦しくなる。しかし、そうなれば結局はFIRE生活をしている人もよほど太い資産形成で「資産収入>生活費」という構図を維持できる場合を除けば、高い生活費を工面できずに労働市場に参入せざるを得なくなる可能性はある。

また、FIRE志望者が増えてインフレになれば、それ以降は新規のFIRE達成者は減ることが予想される。物価上昇以上に入金力を高められる人以外のFIREのハードルが高くなるためだ。経済のメカニズムが働くことで、ある程度は労働市場の均衡が是正されるというシナリオも想定できるだろう。

我々はこれからどう生きるか?

重要なのは危機を煽ったり、不安に嘆くことではない。これまでになかった新たなトレンド展開に備えて、我々は生存可能性を高めるためにどう生きるか?というこれからの身の振り方を考えることである。

1つ目はインフレヘッジ、すなわち資産運用で対応する。インフレが進行する要素は人手不足だけでなく、法定通貨の減価など要因は様々ある。いずれにせよ資産運用をすればインフレヘッジになるので望む、望まずに関わらず投資家というプレーヤーになる必要があるだろう。

2つ目は所得を増やす。人手不足がさらに進行すれば、所得は増加する。だが、自然増加を待つにはあまりにもその変化は緩慢であり、インフレスピードに追いつかない。そのため、やるべきはスキルアップをして付加価値を高めることだ。日本は給料が安いと言われるが、探せば高い所得を得られる仕事は世の中に常に供給されている。変化する市場ニーズから目を離さず、スキルアップをして転職をすることで、収入を増やす努力は比較的報われやすいだろう。

3つ目は独立や副業だ。社会保障がかつてないほど高くなっている今、企業側にとっては正社員を雇うより、フリーランサーや外注という形態で仕事を振る方が雇用費を削減することができるし、いざとなれば契約解除ができる損切りにもなる。そのため、同じ仕事、同じ時間単価であれば、正社員より割高なフィーを受け取ることができるのだ。本業の仕事を続けつつ、かたわらの時間で割高なフィーで稼ぐ道で食い扶持を確保する戦略がワークする可能性はあるだろう。

我が国で30年間続いたデフレ環境とは、全く異なる世界がこれから本格的にやってくる。必要なのはどんな新環境になっても柔軟に対応する力である。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。