AI時代の情報リテラシー:なぜGoogleだけでは足りないのか

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「どこをどうやって探したらいいかわからない」
「集めた情報が正しいかどうかわからない」
「集めた情報をどうやってまとめたらいいかわからない」
「そもそも何を探したらいいのかわからない」

だから、生成AIに訊くどころじゃない。

レファレンス・ガイダンスのプロが、手取り足取り、お教えします!

大学図書館司書が教える AI時代の調べ方の教科書」(中崎倫子 (著) 中央経済社)

[本書の評価]★★★(75点)

【評価のレべリング】※ 標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★  「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★   「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★    「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満

なぜ情報がすぐに見つからないのか

情報収集や調べ物をしていて、探している情報や資料がなかなか見つからない経験は誰にでもあるのではないでしょうか。著者の中崎さんは、大学図書館で約4年にわたり、レファレンス・ガイダンスを担当しています。

「資料や情報収集に関する相談に応じ、実践的な講義も行ってきましたが、その中でもっとも一般的な問い合わせが、『インターネット検索をしても必要な情報が見つからない』『どうやって資料を探せばよいかわからない』というものです。インターネットやAIがあるおかげで、情報収集が昔よりずっと簡単になったことは確かです」(中崎さん)

「ところが、 情報を入手することは簡単になったものの、莫大な量の情報から、自分が必要とし、かつ、質の高い情報を得ることは、いっそう困難になってしまいました。インターネットやAIは、情報を得ることの助けにはなりますが、人間の側で判断しなければならないことはたくさんあります」(同)

インターネットやAIを使いこなせるようになるのと同時に、情報収集の基本的な技法や情報リテラシーを身につけることが求められているのです。

「多くの情報が生産され、情報収集を行う手段が進化したとしても、そもそも私たち人間のほうに、情報収集の基礎スキルや情報リテラシーがなければ、宝の持ち腐れとなります。生成AIが出てきたいまだからこそ、基本に戻ることを考えるときなのかもしれません」(中崎さん)

表層ウェブとは何か

InstagramやYahoo!ニュースなど、いつもスマホやパソコンで見ている情報があります。Googleはクローラと呼ばれるロボットが、世界中のWebを巡回してページ情報を集めていきます。それをランキング順に並べ替えたものが検索結果になります。上位ほどクリックされやすい傾向がありまずから、SEO担当者はランキングアップに必死になります。

1位と2位のクリック率の差は約2倍。自分の意思で情報を選んでいるつもりでも、一方では少し選ばされている感じがします。Googleもよかれと思って、私たちが必要な情報を見つけやすいようにランキングしているとは思いますが。そんな膨大な情報量の表層ウェブもネット情報のたった1%に過ぎません。

深層ウェブとは何か

深層ウェブの情報は検索しても結果に出てくることもありません。個別にログインが必要で特定の人しか見られません。「Googleで検索すれば何でもわかる」と信じられがちですが、本当はGoogleだけでは探せない情報のほうが圧倒的に多いのです。それを知っているか知っていないかでは情報収集に大きな差が表れます。

深層ウェブにあるのが、有益な情報を集めた信頼性の高いサイトです。普通の検索では探せないような大事な情報を、ほかの人より早く手に入れることができます。深海は、知っている人しかたどり着けない特別な場所だと考えましょう。

この機会に情報収集の計画を立てることから始め、 資料の種類と収集の方法、図書館の使い方など情報収集と情報リテラシーに関するスキルを学びましょう。情報の取り出し方をマスターしてみませんか。

尾藤克之(コラムニスト・著述家)

2年振りに22冊目の本を出版しました。

読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)