日本はウイスキーを「戦略商品」にする必要がある

富山県の三郎丸蒸留所のマスターブレンダーの稲垣さんの書いた「ジャパニーズウイスキー入門」を献本していただき、早速読ませていただきました。

Jules_Kitano/iStock

三郎丸蒸留所は以前訪問したこともあり、その際に稲垣さんに蒸留所を案内してもらったこともあり、そこからご縁が広がりました。

日本のウイスキーはここ10年で大きなブームとなっており、人気の銘柄は手に入らなくなり、価格も大きく上昇しています。今や日本のウイスキーはスコットランドと並び世界から注目を浴びる著名生産地となりました。

希少性のあるジャパニーズウイスキーの中には100万円を超えるような高値で取引されているものも珍しくありません。

世界的にこれだけ価値が認められているものにもかかわらず、日本が誇るプロダクトとして国を挙げてプロモーションしていく戦略的な視点がないのが残念だというのが稲垣さんの主張です。

私は政治家ではないので、国レベルではなく投資家として何かできることが無いかを考えてみました。

ウイスキービジネスの最大の難しさは資金調達にあります。

ワインと同じように、原料を仕入れて製品を作ってから長い熟成期間が必要となります。その間の売り上げはありませんから、原料を仕入れてから販売による売り上げが得られるまでのタイムラグが非常に大きいのです。

銀行融資のような不動産担保以外を認めない資金提供ではこのような投資対する融資はなかなか難しくなります。ここに金融の出番があると思っています。ウイスキー自体に対する価値を認める愛好家が資金提供できる仕組みを作ればスムースに資金調達でき、資金の出し手としての満足度も高まります。

ウイスキーの愛飲家というだけではなく、日本のウイスキー業界に投資家として資金提供も行う。このような新しい試みは日本のウイスキーを「戦略商品」にするのに貢献するのではないかと思います。

具体的には、ウイスキーの瓶詰め前の樽を担保に資金調達を行うといった方法が考えられます。

200万円から300万円程度の樽の仕込みに必要な資金を投資として出すことで、将来ボトリングされて出荷した時の利益の一部を投資家のリターンとして受け取れれる仕組みが出来れば、蒸留所は資金を気にすることなく樽の仕込みをできるようになります。

アイディアがあっても実現するには、いくつかのハードルがあると思いますが、せっかく高い評価を受けている日本のウイスキーが長期にわたって安定した供給ができるように、投資家として何かサポートができる方法がないかを考えてみたいと思います。

「ジャパニーズウイスキー入門」には、ウイスキーに関する情報がコンパクトにまとまって掲載されている内容の濃い作品です。

ウイスキー好きな人には一読をおススメしたいと思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年9月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。