発達障害の人に試してもらいたいスマホで目覚める朝のルーティン

bymuratdeniz/iStock

ADHDやASDといった発達障害を持つ人は仕事をしていく上で、さまざまな困難を抱えます。ほとんどの人が努力をすればすぐに改善できそうなことですが、発達障害の人にはどうしても難しいのです。

発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術」(中村郁 著/かんき出版)

[本書の評価]★★★★(80点)

【評価のレべリング】※ 標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★  「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★   「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★    「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満

Yahoo!ニュースも使いよう

中村さんは、二度寝防止にアラームを設定している。その考え方がユニークである。

「何度も二度寝を繰り返し、よく目が覚めてきたあなた。まだ頭がボーッとしているかもしれません。そんなあなたには、起き抜けにネットニュースを見ることをおすすめします。私は普段、スマホを触るときは、タイマーをかけるようにしています。一度ネットサーフィンをはじめると、関連するものを延々見続けてしまう癖があるからです」(中村さん)

「やらなければならないことを抱えているときは、極カスマホを見ないようにしています。ただし、朝の寝起きだけは、ネットニュースを見ることが非常に役に立ちます。意識は覚醒したけれど、まだ横になっていたい、目をつぷりたい······と思ったとき、無理矢理でもいいのでYahoo!ニュースを開いてみてください」(同)

寝ぼけ眼で見はじめていても、大物有名人などの衝撃ニュースが目に飛び込んでくることがある。衝撃ニュースでなかったとしても、アルゴリズムの影響でスマホの画面に並ぶニュースは、自分が興味のあることばかりだ。中村さんは次のように言う。

「私のスマホにズラリと並んでいるのは、綾野剛主演映画の記事や、発達障害に関する記事、声優に関する記事などです。見ているうちにどんどん覚醒してきます。起き抜けにニュースをチェックすることは、世の中の流れをつかむという意味で必要です」(中村さん)

「注意してほしいことは、ネットニュースを見終わったら、スマホを触るのを必ず辞めることです。決して、朝の忙しい時間にYouTubeなどを開いてはいけません。聞いたが最後、止まらなくなり、あなたはせっかくアラームの設定を見直してまで挑んだ朝の闘いに、無惨にも敗北してしまうでしょう」(同)

普通がむずかしいという話

中村さんは幼いころより体が弱く、癇癪や、過剰に集中し過ぎてしまう「過集中」、さらには物忘れがひどく大変な毎日を送ってきたそうです。大学受験では過集中がプラスに働き、偏差値40を70まで上げて志望大学(同志社大)に合格するも、入学後は華やかな学生たちに馴染めませんでした。

ところが、「過集中」がプラスに働いて、「声の世界」へはいることになります。ナレーターの道を勧められ、大学卒業と同時に現在の事務所に所属しました。ナレーターには高い集中力が必要とされますが、短所を長所として活かしながら活躍している点が興味深いところです。

発達障害を持つ人は、集中力を発揮したり、記憶したりといった、ほかの人にはない得意な能力も兼ね備えていることが多いのです。環境を調整し、上手に工夫して、苦手な部分を補うことができれば、その力をいかんなく発揮し、素晴らしい成果も残せます。

本書では、中村さんが数々のライフハックを公開しています。発達障害を持つ人たちが、周りとトラブルを起こすことなく、ミスを少なく仕事して、ストレスがたまらず、成果を出せる方法をこの機会に学びましょう。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

2年振りに22冊目の本を出版しました。

読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)