これが日本の産業界における気候リーダーたちのご認識です。
太陽光、屋根上に拡大余地…温室ガス削減加速へ、企業グループからの提言
245社が参加する企業グループ、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)は7月、GHG排出量を2035年度までに13年度比75%以上削減する目標を求める提言を発表した。実現のため再生エネ比率を60%以上に高めるように要望した。
(中略)
提言の具体策として、住宅屋根やビル屋上への太陽光パネルの導入加速を要望。日本は面積当たりの太陽光発電の導入量が世界トップとなり、追加できる適地がなくなったと言われる。一方でJCLPは屋根・屋上に大きな余地があり、導入拡大が可能と訴えた。
この245社の経営者の皆さんは、東京都が新築住宅へ太陽光発電の設置を義務化したことに対して多くの都民から反対の声が上がっていることをご存じないのでしょうか。杉山大志さんと上田令子都議が東京都へ提出した質問状に(「国民」「都民」を「産業界」に読み替えた上で)答えていただきたいものです。
- 中国政府によるジェノサイド・人権弾圧への加担を都民に義務付けることにならないか。
- 国民・都民への負担が巨額に上るのではないか。
- 水害時に人命が失われるのではないか。
追加で、
- ライフサイクル全体でCO2削減に貢献するのか。
- 2035年までに13年度比75%以上削減したとして、地球の気温上昇抑制効果は何℃を見込んでいるのか。
- 太陽光パネルは大量の処理困難物となって将来世代へ負の遺産となる可能性が高いが、廃棄方法を考えているのか。
このあたりにもぜひ答えていただきたいものです。
「日本は年30兆円を海外に支払って化石燃料を輸入している。『35年60%以上』に再生エネを増やせば、15兆円以上を国内に還流できるとの試算もある。ペロブスカイト太陽電池や浮体式風力、蓄電池を国産化できれば、さらに国益が増進する」
こちらのコメントについては、奇しくもこの記事と同日にアゴラに公開された杉山さんの論考で否定されました。なんてタイミング!
日本の化石燃料輸入金額が2023年度には26兆円に上った(図1)。これによって「国富が流出しているので化石燃料輸入を減らすべきだ、そのために太陽光発電や風力発電の導入が必要だ」、という意見を散見するようになった。
だがこの説は本当だろうか。
(中略)
発電用に限って言えば化石燃料輸入金額は3.2/2+1.6/2=2.4兆円程度だったことになる。化石燃料の輸入総額に比べると、だいぶ少なくなる。
(中略)
「化石燃料輸入」は「国富流出」と同義ではない。
(中略)
化石燃料は、その利用技術も含めると、全体として安価かつ有用なエネルギーだ。だからこそ日本はそれを活用して自動車を走らせ、製造業を発展させた。太陽光発電や風力発電で化石燃料利用を減らす試みは経済的にマイナスにしかならない。再エネ設備の輸入代金が流出するし、電気代高騰による産業空洞化で製品輸入が増えて国富が流出するからだ。
もしどうしても化石燃料の購入代金による「国富の流出」も減らしたければ、化石燃料の自主開発を進め、資源権益の確保を進めればよい。これはエネルギー安全保障の確保にもなる。
記事の最後の発言にいたっては、もう絶句するしかありません。
―風力発電設備は輸入に頼っています。他の脱炭素製品も含めて国産化したくても製造業は人手不足が懸念されます。
「憧れの産業にすることが大切だ。モノづくりにインセンティブを与え、プライドを作る。そのための教育も重要になる」
ちょっと何言ってるか分からない。。質問に正面から答えない、まるで石破構文や進次郎構文を見ているようです。
おそらく個社ではCO2削減に貢献する技術や製品・サービスがあるので245社もの企業が賛同しているのだと思いますが、マクロで見たら日本の国力を落としてくださいと国に提言していることにこの経営者たちは気が付いていないのでしょうか。
自社が短期的に儲かる反面、長期的には日本の産業界全体の国際競争力を落とす方向となり、「国破れてパネルあり」、「CO2減じて国破れたり」を招いて自らも滅んでしまいかねない。
脱炭素をめぐる分かりやすい合成の誤謬です。
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