米国、ベネズエラ・マドゥロ大統領専用機押収の舞台裏

ベネズエラのマドゥロ大統領の専用機、米国が押収

米国政府は9月2日、マドゥロ大統領の専用機、仏ダッソー社のファルコン900EXを押収したことを明らかにした。それが違法に米国からベネズエラに輸出されていたというのが理由だ。マドゥロ大統領は飛行機を30機余り所有しているという。

今回彼の専用機が押収されたとしても、彼にとって深刻な問題にはならない。しかしマドゥロ氏が外遊する時は、いつもこの飛行機を使っていた。何しろ航続距離が8300キロあるので、イランやアルジェリアを訪問するのによく使用されていた。またキューバ、ボリビア、ブラジルへの訪問もこの専用機を使用していたのが記録されている。

そもそも今回の押収に至った背景は、米国財務省の調査によると以下の通りである。

2022年末から2023年始頃に、マドゥロ氏に関係した人物がカリブ海に会社を所有していると称してこの飛行機を所有しているフロリダの会社に接近。購入した価格は1300万ドル。その後、カリブ海を経由してベネズエラに輸出された。2023年5月からマドゥロ大統領はこの飛行機を専用機としてベネズエラの空軍基地から離着陸していた。

この飛行機が押収されたのはドミニカ共和国で、メンテナンスの目的で今年5月にベネズエラからドミニカ共和国のホアキン・バラゲル国際空港に着陸していた。

それを追跡調査していた米国財務省は、ドミニカ共和国政府にこの飛行機が違法に輸出されていたことを説明し、その押収に協力を要請したものだ。その根拠になっているのは、2019年8月にトランプ前大統領が施行した法律によるものだ。それによると、ベネズエラの大統領かそれに関係した人物、または会社が米国と取引することを禁止するという規定に基づいたものだ。

ドミニカ共和国は米国からの要請を受け入れた。というのも、同共和国も7月に実施されたベネズエラの大統領選挙が違法だということを表明。それに対して、ベネズエラ政府は同共和国と国交を断絶するという行動を取ったことに対する同共和国の反撃とも受け取れる。なお、同専用機は既にフロリダに移されている。

この押収は米国政府のマドゥロ政権への制裁強化の一環だった

米国政府が今回の押収を決定したのも、マドゥロ氏への制裁を強化したいというのが理由だ。7月28日の大統領選挙でマドゥロ氏は開票結果も公表せず違法に統領職を継続している。対立候補だったエドゥムンド・ゴンサレス氏の勝利をマドゥロ氏が素直に認めておれば、今回の押収劇もなかったであろう。ところが、マドゥロ氏は違法に大統領職を継続している姿勢にバイデン大統領は彼への制裁を強化したというわけである。

因みに、スペインのサンチェス首相も同じ飛行機を首相専用機として利用している。モデルは900Bで、マドゥロ氏のそれよりも2座席多くなっている。

サンチェス首相は公私にこの飛行機を利用しており、私的目的にまで頻繁に首相専用機を使うということに国民の間から批判が出ている。