カタールの医療と日本の未来:ドーハで考えた日本の課題

今、カタールのドーハ空港にいる。午前1時30分発大阪行きの飛行機に乗る予定で、午後11時過ぎに空港に到着したのだが、何と4時間30分遅れの午前6時出発に変更されており、この時点でも空港のラウンジに4時間以上もいる。

チェックインの時に、「念のために携帯の番号を」と言われたので、嫌な予感がして、「遅れるのか?」と尋ねたが、そうでないと言われた。しかし、その20分後に遅延の表示が出た。最初は午前4時発だったが、午前6時になった。ガックリだ。この時間帯の遅延は体に堪える。もう少し早く連絡してくれれば、ホテルで仮眠をとれたのだが、すでに空港にいるので、後の祭りだ。

通称:新ドーハ国際空港

出発前にホテルでCNNニュースを見ていると、テルアビブの上空に、イランから発射された多数のミサイルがた映っていた。約200発発射されたそうだが、イランの南から発射された場合には、カタールの上空を飛ぶことになるので心配していたが、ほとんどの飛行機が遅れているので、どうもこの影響が及んだようだ。

すでに昨年のハマスからイスラエルへの攻撃に端を発して、多くの犠牲者が出ているが、イランとイスラエルの本格的な戦争にならないことを祈るばかりだ。

今回も、カタールでいろいろな所を訪問したが、シミレーションセンターには建物全体に多くのトレーニング用の人体モデルが置かれていて圧巻だった。

例えば、疑似ICUでは、多くの機器に囲まれた人体模型が置かれていた。様々な病態をシミュレーションした数値が表示されて、中東やアフリカの医師のトレーニングを行っているとのことだ。Sidra Medicineには最先端の自動機器類が配置されていたが、日本の病院にはないような規模で整備がされていた。

放射線診断・治療機器類は、日本の医療施設には遠く及ばない感じがしたが、現在の国を挙げてのカタールの医療への注力を考えると、日本に追いつき追い越すのは時間の問題だ。

日本の機器メーカーはアジアやアフリカでの販売が芳しくないと言っているが、カタールのように中東諸国やアフリカの医師のトレーニングを行っている施設に日本製の機器を置けば、日本製の機器類になじんでそれぞれの国に戻った医師たちがそれらの機器類を推奨してくれることになるはずなので、どうして少し長い目で見て投資していかないのかと不思議に思った。

目先の利益に追われて足元しか見ない方法では先が知れている。「損して得取れ」といった大阪商人の考え方をもっと学んでほしいものだ。

そして、日本を不在にしている間に、石破内閣が発足して、新閣僚が報道されていた。ゲームが終わってノーサイドのはずが、押し出した力士を、土俵下まで突き飛ばすような人事で驚いた。まるで、オセロゲームのように主流派・非主流派の逆転現象である。

旧安部派と麻生派の怒りに火が付けば、内閣がすぐに吹っ飛ぶような勢いと報道されている。与野党で議論をしてから選挙のはずが、総理大臣に任命される前に解散と総選挙の日が公表されるなど、驚きの連続だ。

と言いつつも、無事に大阪に戻れるかどうか心配で、気も漫ろだ。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年10月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。