国民民主党の玉木雄一郎代表が、よくある間違いをしているので、今年初めの池田信夫ブログの記事を再掲。
朝のフジテレビの番組「日曜報道」で、どんな日本を目指すか問われたので、
「若者(現役世代)をつぶさない日本」
と書かせていただいた。
日本の現役世代の生産性は実はG7でNo.1だ。高齢者人口が増えているから全人口で割ると下がっているだけだ。… pic.twitter.com/6JIOP7siER
— 玉木雄一郎(国民民主党代表) (@tamakiyuichiro) October 13, 2024
日本の現役世代の生産性は世界最高?
日本経済が停滞している一つの原因が高齢化であることに疑問の余地はない。1990年を100とした実質GDP(購買力平価)でみると、G7の中で日本の成長率はイタリアと並んで最下位である(図1)。
図1 G7諸国の実質GDP
しかしFernandez-Villaverde, Ventura & Yaoは、GDPを生産年齢人口(15~64歳)で割ると、日本はG7の平均以上であることを発見して話題になった(図2)。日本の労働生産性は高いが、労働人口が減っているため、全人口で割るとGDPが低くなるのだ。
図2 生産年齢人口あたりGDP
日本の生産年齢人口あたり成長率はアメリカより高く、2010年代ではG7で最高だった。つまり日本は特殊ではなく、先進国の成長にとって最大の脅威は高齢化であり、それが最初に日本で起こっただけだというのだが、これは本当だろうか?
日本の「労働人口あたりGDP」は2010年代に下がった
この論文はG7を同じ条件で比較しているが、日本人が読むとすぐ気づくのは、生産年齢人口と労働人口は違うということだ。15~64歳の中でも就業率は男女で違い、さらに65歳以上でも働く人はいる。
これについてMITの大学院生がデータを補正している。生産年齢人口は1990年代から毎年1%減っており、企業はそれに対応して主婦などのパートを採用し、退職した高齢者を再雇用した結果、日本の就業率はG7で最高になった(図3)。
図3 生産年齢人口の就業率
労働人口=生産年齢人口×就業率と考え、労働人口あたりGDPをみると、図4のようになる。
図4 労働人口あたりGDP
残念ながら労働人口で割っても日本の成長率はG7で最低で、特に2010年代に大きくがった。これは非正規労働者が増えて平均労働時間が減った影響も大きいが、労働時間あたりでも同じく最下位(OECDで27位)である。
世界金融危機で企業が淘汰され、グローバリゼーションが進んだ2010年代に、日銀がゼロ金利でゾンビ企業を延命したため新陳代謝が進まず、量的緩和で大量に供給された資金で大企業の海外直接投資が進んだ。アベノミクスの温情主義は生産性の低下と産業空洞化をまねき、大きな負の遺産を残したのだ。