カタルーニャで徴収する税金の100%を州政府が管理する
カタルーニャ州の州知事の誕生が長引いていた。しかし、ここに来てサンチェス首相がまた独立派政党の要求を受け入れた。今回は税の徴収に関しての要求だ。即ち、カタルーニャ州で徴収する税金の100%を同州政府が管理するというものだ。
これまでは他の大半の自治州と同様に、州内で徴収した税収のほぼ50%を中央政府に納めるというシステムを受け入れて来た。その後中央政府から交付金という形で各自治州に配分されるということになっていた。このシステムの変更はそれはカタルーニャ社会党の党首サルバドール・イーリャ氏を州知事にさせるための交換条件であった。
この受け入れによって、カタルーニャ社会党とカタルーニャ共和左派それに共産主義のスマールと連携した政党ロス・コムネスの3政党による連立政権が誕生した。カタルーニャでこれまで2度に亘って3政党が連立して政権を担ったことがあるが、いずれも失敗している。
勿論、カタルーニャ州政府が徴収した税金の100%を管理するといっても、中央政府がカタルーニャで負担している費用については州政府の方から中央政府に支払うことになっている。しかし、重要なのは税収の使い道を今後は中央政府の採決を仰がずに、州政府が独自に決めることができるということである。それは独立への道に重要な要素となる。
しかも、カタルーニャ州から中央政府に納めていた税収が存在しなくなると、中央政府ではおよそ233億ユーロの歳入を失うことになるという。即ち、その分を特に歳出が歳入を上回っている他の自治州に配分できなくなる。それを補填するには税金の値上げしかない。
中央政府はそれを否定しているが、それ以外の方法では種々障碍がある。更に、財政バランスが歳入超となっているマドリード州はカタルーニャ州が中央政府に納めない分の一部を負担するようになる。それは15億ユーロ程度になり、その分を州内の発展に充てられなくなる。
この特例はスペインの上下院での否決は必至
しかし、このシステムを導入するにはスペインの下院と上院での承認が必要となっている。恐らく、承認が却下される可能性が高い。なぜなら、社会労働党の中央政府が承認したといっても同党が自治州の政権を担っている州政府にとって中央政府からの交付金の削減というのは受け入れられないからである。更に、国民党が政権を就いている自治州での反対は明白である。
更に、このシステムは憲法の規定に背くことになると判断されている。憲法ではバスク州とナバラ州以外の自治州は中央政府に徴収された税金を一旦納め、その中から中央政府は各自治州に交付金として配分することが規定されているからだ。カタルーニャ州だけ特例を認めるのはまた憲法の改正も必要となってくる。
カタルーニャの財政事情は最悪
カタルーニャはスペインの自治州の中で財政事情が最も悪く、徴収する税金も16種類もある。他の自治州で最大は6種類の税金。しかも、負債は同州GDPの120%もある。独立することを宣言してからカタルーニャから州外に本社を移転した企業は9000社あまり。即ち、これらの企業は法人税は移転した自治州で納めることになっている。しかも、カタルーニャでの生産品の半分はスペイン国内で販売している。仮に、カタルーニャが独立するような事態になれば、カタルーニャ商品への不買運動も起きるであろう。
このような事情下での独立など自殺行為である。それを独立派政権は今も理解できない。独立政党への支持が続く限りカタルーニャの州民にとって不幸は続くであろう。