米国の大統領選挙・議会選挙は、トランプと共和党の全面的な勝利に終わった。選挙人で過半数を占めただけでなく、各州での勝敗でも疑念が残るものもなく、総得票数でもハリスを上回った。
さらに、上院でも安定的な過半数をとり、下院でも僅差だが優位を維持しそうだ。もはや安定政権としてだいたいのことは通すことができる。
何より歓迎できるのは、ウクライナ戦争を終結させるために、民主党に妨害されないことだ。パレスティナの運命には胸が痛むが、与野党伯仲なら状況がよくなるわけでない。
トランプ大統領については、4年前よりよくなったことは何もない。老いがゆえの衰えも顕著だし、良識派の側近も去ってわがままを抑えにくくなっている。トランプ氏に米国民を惹きつけるものはなにもなかった。
日本の側は、話が長くて分かりにくく考え方でももっとも相性が悪そうな石破茂が首相という不運。しかも、与党が衆議院で過半数を持たないという最悪の事態だ。
経済はトランプのほうがよくなる、治安や平和も同様だという人が6割を超える中で、ハリスに投票するとしたら「トランプは民主主義の価値観を尊重しないのでさすがに躊躇する」と言う以外になかった。
しかし、ウクライナが典型的だが、法の支配を理由に取引を拒否して戦争を続けてきたのがバイデン政権だし、その考え方だと安心できる平和への出口へ向かう術はない。
ただ、どうしてもトランプは容認できないから実利を超えて、ハリスに投票するかといえば、それだけの魅力がなかったということだ。
とくに作戦上の誤りだったと思うのは、最終盤で女性のセレブたちを集結させて、妊娠中絶問題などに特化した運動を展開したことだ。彼女たちと大衆が価値観を共有できるはずがない。
今回、意外なほどだったのは、黒人やヒスパニックにおけるトランプの劣勢が驚くほど縮小したことだ。もともと、新たな移民の流入は彼らにとってもっとも不利益を与える。また、現実に生活水準がトランプ時代より下がっているのだから、裏切り者といわれてもトランプに投票する人が多かった。
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