拙著『アメリカ大統領史100の真実と嘘』(扶桑社新書)に少し手を加えた「ドナルド・トランプ大統領伝記物語伝」の第2回は、トランプ大統領が就任した2017年の出来事について述べる。
トランプ大統領の就任式は1月20日に行われ、新大統領は「America First(アメリカの利益最優先主義)」を強調した。
2月28日には、議会両院合同会議での施政方針演説が行われ、TPPからの撤退、メキシコ国境の防壁建設、イスラムのテロからの防衛、ISILの壊滅、インフラへの1兆ドル投資、法人税の減税、オバマケアの撤廃、大幅な国防予算の増額などが盛り込まれていた。
トランプの政策は乱暴な印象を与えるが、オバマ前大統領も、表立っては目立たないが、抜け道を見つけながらリベラルな改革を行っていたという背景がある。
例えば、皆保険を目指したオバマケアも強引に推進され、国民的合意は不十分であった。さらに、パリ協定についても、議会の批准を受けない形で努力目標として導入され、政権交代後の揺り戻しが予想されていた。
トランプ政権で最初に大きな騒ぎとなったのは、中東諸国からの入国制限であり、連邦裁判所の下級審によって阻まれることが多かったが、その後は次第に巧妙な対応が取られ、中国からの入国や活動を含め、アメリカへの入国が厳しく規制されるようになった。
メキシコ国境の壁建設については、物理的な壁の進展は見られないが、実質的に移民の流入がかなり抑制された。
オバマケアの廃止は、上院でのマケイン上院議員らの造反によって失敗に終わった。一度制度が整うと、廃止は容易ではない。
外交面では、北朝鮮への強硬姿勢が目立ち、金正恩第一書記を「小さなロケットマン」と呼び、年末にはテロ支援国家に再指定した。
ISILとの戦闘では、7月にイラクのモスル、10月にはシリアのラッカが陥落し、アメリカが有利な展開となり、中東ではイスラエル寄りの姿勢に転換が進んだ。
いわゆるロシア疑惑については、コミーFBI長官の解任を行い、その後ロバート・モラー元FBI長官を特別検察官に任命した。
社会問題としては、ラスベガスでの銃乱射事件や、女性の性被害についての「Me Too(私も)」運動が注目され、さらに、メーガン妃の婚約も話題となった。
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