東京で働くと貧乏になる時代へ

黒坂岳央です。

国土交通省の調査で衝撃的な事実が明らかになった。東京で働く中間層の実質手取りはなんと、全国最下位位なのである。これは信じがたい話である。

「仕事とチャンスを求めて東京で!」という人は大変多いが、戦略的に上京しなければかえって地方にいる時より生活は貧しくなってしまう。特に今は円安やインフレトレンドが継続しており、今から10年前とはあらゆる環境が変化してしまったと考えるべきだろう。

Kunihito Ikeda/iStock

手取り所得が最低の東京都

同調査によると、次のようにまとめられている。

東京都の可処分所得は全世帯平均では全国3位だが、中央世帯(※2)の平均は12位。
一方で中央世帯の基礎支出(※3に示す食・住関連の支出を言う。)は最も高いため、可処分所得と基礎支出との差額は42位。
更に費用換算した都道府県別の通勤時間(※4)を差し引くと、東京都が最下位。 引用元:都道府県別の経済的豊かさ(可処分所得と基礎支出)

つまり、東京は所得自体は悪くないのだが、それは高額所得者が平均値を引き上げた数値に過ぎず、「中央世帯」に限れば高い生活費負けをしてしまう。それを考慮すると、手取りは47位と文字通り「全国最下位」になるというのだ。また、この調査データからは「通勤時間」も負荷としてのしかかることを示している。一部の高額所得者以外、東京は地方にいる時より経済的に余裕がない生活になる。

こうした意見に対する想定反論として「地方は車代もかかるではないか」というものが挙げられるが、軽自動車を使ってリセールバリューまで考慮し、安い賃料も考えるとそれでも都内での割高生活を覆す結果にはならない。

筆者は東京から地方へ移住したのだが、圧倒的に生活費は安い。地方は自動車社会だが、トータルだと東京より生活費は格段に安く済む。東京の収入を維持できれば、地方だとかなり余裕のある生活を送ることができるのだ。

東京はup or outか?

up or outというビジネス用語がある。主に外資系のコンサルティングファームなどでよく使われる言葉で、「昇進するか、退職するか」という意味だ。今後は東京で働いて生活する時にも当てはまる言葉と言える。

東京の価値はビジネスチャンスだけではない。とはいえ、お金がないと何もできない。特に今後はインフレ環境でことを考えると、上りエスカレーターを逆走するような感覚で、高い上昇志向を持って上へ上へと目指す生き方が求められるのではないだろうか。そうしなければ、時間の経過とともに現状維持では相対的にドンドン貧しい生活を余儀なくされる。

これはつまり、インフレや円安による物価高騰に負けないくらい、収入を増やし続ける力が必要になるということだ。「そうはいってもどれだけ頑張って会社に尽くしても、全然昇給してくれないではないか」という反論が想定される。

だが、これについては過去記事・日本人サラリーマンの低すぎるやる気を高める方法で書いた通り、「サラリーマンの収入アップは昇給ではなく、転職するしかない」という主張のとおりだ。ちなみにこの事情は日本だけでなく米国でも同じである。

誰にとっても、スキルアップとそれに伴う転職はできればやりたくないものだ。余暇時間がなくなるし、転職はどうしてもリスクが伴う。しかし、東京で働くというのは、そういう振る舞いをする場所になってしまったと思考を切り替える必要がある。

筆者もサラリーマンで上京して働いている時は、転職直後の時点ですでに次の転職を想定して、日々の仕事やスキルアップに励んでいた。これはかなりハードで簡単なことではないが、そうしなければジリ貧になってしまう。

東京で上を目指し続けることをしたくない、目指すことに疲れたという人はリモートワークで地方移住をしたほうがトータルのコストは安く済む。「地方は同調圧力が強い」といった話もあるが、それは元々、生まれ育った土地に近所に見知った関係者に囲まれている場合の話だ。筆者は縁もゆかりも無い土地へ移住したが、誰からも煩わしい干渉も受けていない。

 

■最新刊絶賛発売中!

[黒坂 岳央]のスキマ時間・1万円で始められる リスクをとらない起業術 (大和出版)

■Twitterアカウントはこちら→@takeokurosaka

YouTube動画で英語学習ノウハウを配信中!

アバター画像
ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。