ドイツのショルツ首相が15日、ロシアのプーチン大統領と電話会談したとの外電が流れてきた。会談の詳細な内容は公表されていないが、ドイツ政府報道官によると、会談はおよそ1時間にわたった。
ショルツ首相はロシアによるウクライナ侵攻を非難し、戦争を終結させ、ロシア軍を撤退させるようプーチン大統領に求めた。プーチン氏からどのような返答があったかは不明だが、ウクライナとの外交的解決に応じる姿勢を示したという。ショルツ首相にとっては、2022年12月以来のプーチン氏との会談となった。
ドイツ政府報道官はまた、「ショルツ首相はモスクワへの電話会談に先立ち、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話で会談し、その後、プーチン大統領との会談内容をゼレンスキー氏に伝える。さらに、ドイツ政府はこの会談の内容を同盟国、北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合(EU)にも通知する」という。ショルツ首相とプーチン大統領は、今後も連絡を取り合うことで合意したという。
ドイツは米国に次ぐウクライナ支援国だ。しかし、ショルツ首相は戦争のエスカレーションや西側諸国の直接的な関与を防ぐ必要があると主張し、ドイツ製の射程500キロメートルの巡航ミサイル「タウルス」のウクライナ供与についてはこれまでウクライナ側の強い要請にも拘わらず拒否してきた。
一方、モスクワからの情報では、プーチン大統領はロシア軍が占領したウクライナ東部領土の併合のほか、ゼレンスキー大統領を中核としたキーウ政府の交替、非武装化、非ネオナチ化を要求しているという。同大統領は来月19日、内外のジャーナリストを集めた記者会見を開く予定で、その際、ロシア側の停戦案が発表されるのではないかと予想されている。
ちなみに、ドイツ政府関係者によると、ショルツ首相は特に、ウクライナの民間インフラに対するロシアの空爆を非難する一方、北朝鮮の兵士をロシアに派遣することについても、「紛争の重大なエスカレーションと拡大を引き起こす」と警告したという。北朝鮮から数千人の兵士が既にロシア軍と共にウクライナと戦っているが、北側は大砲と共に砲兵もロシア軍に送っているという。
ところで、ロシア国防省が最近公表した、戦争負傷者への補償金制度に対して、負傷兵士の家庭などで不満が聞かれる。
これまでウクライナ戦争で負傷した兵士に対してはその負傷の重度とは関係なく一律300万ルーブル(約3万ドル)が支払われてきたが、新制度では重度の負傷した兵士には300万ルーブルから400万ルーブルに引き上げられる一方、負傷が軽い兵士には100万ルーブル、10万ルーブルとその額が少なくなる。この結果、国防省側が支払う補償金総額は一律300万ルーブルより減少するという。
この新制度は経済専門家出身のアンドレイ・べロウソフ国防相の「資金の効率的使用」の改革案の一つという。軽度の負傷の兵士は受け取る補償金が少なくなるということで、批判の声が出てくるわけだ。
ドイツ民間ニュース専門局ntvのモスクワのライナー・ムンツ特派員によると、「モスクワは前線から遠く離れており、日常生活ではウクライナに対する侵略戦争の痕跡はほとんどないが、スーパーで買い物する人々は棚にある商品の値段を見て、怒りの声が聞かれる。今年8月末段階で、インフレ率は食料品は9.72%、財6.09%、サービス11.73%となっている。また、68歳の医者が戦争を批判したということで5年の実刑判決を受けている。ロシアでは依然、プーチン大統領のウクライナ戦争を批判することは許されない雰囲気が漂っている」という。
なお、ウィーンの比較経済研究所(wiiw)によると、「政策金利はすでに19%に達しており、さらに引き上げられる可能性が高い。上半期の業績を受けて、通期の成長率予測を再び3.8%に引き上げたが、その後、成長率は2025年に2.5%、2026年には2.2%に低下すると予想されており、インフレ率が4%の目標に戻るのは2026年以降と予測される」という。
ロシア国民は当分、高インフレの中、厳しい生活を強いられるわけだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年11月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。