兵庫県民を馬鹿にするマスコミ --- 田中 奏歌

兵庫県県知事選が終わったときにその結果にマスコミはどういうのかと思っていたら、やはり苦し紛れのとんでもないことを言い出している。

斎藤元彦氏インスタグラムより

すべてのワイドショーを見たわけではないが、斎藤前知事の再選に対する基本的な論調は「SNSなどのネットの選挙戦術が奏功した」「N国の立花氏の登場が奏功した」ということのようである。

タレントの宮根氏は、自身がメインの2つのワイドショーで、「ネット空間は事実ばかりではない」と、まるでネットのウソ情報で県民が騙されたと言わんばかり、というかそうとしか取れないことを言っていた。

その他の番組を見てもほとんどが、SNSの影響と立花氏で斎藤氏が支持された、という論調である。
これって、おかしくはないか?というより兵庫県民をあまりに馬鹿にしているのではないか?

今回の選挙結果の本質は、「マスコミの報道が信じられない」「調べたら斎藤前知事に問題はないのではないかと考える県民が多かった」ということであり、一部にはSNSでだまされた人もいるだろうが、斎藤氏に投票した人の多くがネットの言説にだまされた、というのは兵庫県民に対して失礼である。

確かにSNSがなければ斎藤氏の勝利はなかったであろう。しかし、県民はSNSを鵜呑みにして斎藤氏支持だったのではなく、あくまでSNSを個人の判断のきっかけにしたに過ぎない、と分析するべきであろう。立花氏についても同じである、「また、例の彼か」と思うものの、立花氏の話をきっかけにメディアで流された情報を再検討した人も多かったに過ぎない、と分析すべきであろう。

「SNSの勝利」とマスコミが斎藤前知事の勝利の原因を、選挙戦術のうまさとして責任転嫁して逃げるのではなく、自分たちの報道に疑問符を突き付けられた、という事実をきちんと受け止めるべきである。

議員や首長と違い、選挙という洗礼を受けないで好き勝手にできるマスコミではあるが、今回は選挙の洗礼があり、マスコミが否定された、と素直に認めるべきではないだろうか。

県側が「法律上問題なし」として通報に対して行った処分を、法律上の検討もせずにことさらに違法であると言いたて、また、一般社会の上下関係の厳しさを知らないコメンテーターにパワハラと言いたてさせる報道などについて、ネットを通じて疑問符が示されたわけである。

今回の斎藤氏の勝因は、きっかけとなったネットではなく、ネットで提示されたことをきっかけに「オールドメディアは信用できない、嘘ばかりである」と県民が判断した、ということではないか。これについてマスコミは答えるべきである。これこそマスコミが得意とする「説明責任」である。

この選挙結果について、自分たちの報道が、事実であったのか、煽りではなかったのか、という点を検証すること、つまりネット空間で示されたような県民が判断を変えた根拠となる論説について、それが事実なのかどうかをマスコミが検証し、嘘をついたのがマスコミなのかネットなのかという点についてマスコミが説明責任を果たさないと、なぜ今回の選挙結果が斎藤氏勝利になったのかをいえないのではないだろうか。

※ 息子と話をしていて、「そんなことメディアがするわけないじゃん」といわれたが、それでもメディアには説明責任を果たしてもらいたいと言い続けたい。

マスコミが知事を辞めさせたのではない、議会の議員が判断したのだ、という説明は問題外である。維新が途中で判断を変えて斎藤氏の攻撃にまわったことを見てもわかるとおり、世間が・・・というか実際には世間ではなくマスコミがどう言うか、ということで議員は左右されるのである。

※ 県議会の議員に比べて、斎藤氏がここまでされても、ほとんど反論もせず淡々と質問・追及に答え、説明している姿勢、しかも再当選してもまだマスコミに反論しない姿勢は、ある意味すごい方だと感心している。

11月18日のゴゴスマで東国原氏が、「本来は、県会議員は再度不信任を出すべきだが、再度不信任をたたきつけると、議員個人がネットで晒されるので議員は黙るしかない」とまで言っていた。これもネットは暴力の手段であると言わんばかりで、ネットの力で斎藤氏が勝ったのは正義ではないと言っているようなものである。

ネットによる暴力という一面はないわけではないが、マスコミはその他の選挙でSNSの力を市民の力だと好評価していたのではなかったか。暴力というなら、マスコミの言論による暴力による斎藤氏の失職ではなかったかを検証すべきである。

「斎藤知事ってイヤな上司みたいだけど、よくいるうるさい普通の上司だよね、それに比べてあまりにも部下のレベルが低すぎるよね」と言って白い目でみられていた私は、兵庫県民を素晴らしいと思うのだ。

田中 奏歌
某企業にて、数年間の海外駐在や医薬関係業界団体副事務局長としての出向を含め、経理・総務関係を中心に勤務。出身企業退職後は関係会社のガバナンスアドバイザーを経て、現在は隠居生活。