日本人に英語を期待するのは無理なのか?

世界最大の語学学校、EF Education First (スイス)が毎年発表している世界の英語能力調査で日本は今年、92位で過去最低となりました。

EFは世界各国の単なるランクのみならず、熟達度を5段階に分けてそのカテゴリーを示してますが、日本はLowカテゴリーの最低ランク。この下はVery Lowで中東の国々や小国などが主流であり、先進国である日本がこれほどの下位ランクに甘んじているのをみて正直ここまでひどいのか、と改めて思わざるを得ません。

過去のトレンドを見ても2011年から一貫してレベルが下落しているのは日本とレバノンぐらいで教育的背景を考えると日本は異様なほど英語能力に乏しいと言わざるを得ません。

Nauval Wildani/iStock

ところで先日、当地の大学の日本語クラス履修の学生にご挨拶をさし上げた際、「日本人は英語がへたなので皆さんの日本語の勉強は役立つ」と申し上げたら笑いが起きました。また「日本では国際企業が多いにも関わらず、英語のみならず、国際感覚に優れている人材が不足しているので皆さんが日本で仕事をしたいなら見つけやすい」とも申し上げました。

私の会社で日本語の教材を大学向けに卸させて頂いていますが、一定の売れ行きを維持しているのは「日本には興味あるけれど英語が通じないので日本語を勉強しないとだめだよね」という意識を持っていることはあります。

私が19歳の時に初めてパリに行った際、「フランス人に英語で質問してもフランス語で返事が来るんだよね」と仲間と話した記憶があります。フランス人は自国語に対して極めてプライドを持ち、大事にしているという意味ですが、英語で聞いてそれを理解した上でフランス語で返すのと端から何を言っているのかわからないのとは大違いです。

日本では今、小学校3年から英語教育が始まります。高校卒業まで10年英語を学ぶわけです。また高校生で修学旅行に海外に出る私立学校は結構あり、バンクーバーはそのメッカの一つであります。

ただ、私が長年、街ブラをする修学旅行生を見たり、時として海外に住む人として話をする機会を持ったりする中で、海外修学旅行の意味はあまりないと思います。学校が魅力的に見えるプログラムとしてやっている一方、学校の先生は生徒の安全確保のために極めて厳しい行動制限をしているのでまるで動物園で檻の中にいる外国人を見ているようなものなのです。

私は最近、家の周りに10数軒ある韓国居酒屋の4-5軒の店に順番に行くのですが、店員の方はワーキングホリディの方を含め結構会話ができる人が多いのです。しかも私の30数年の経験値からして韓国人の英語力は明らかに上昇しています。

その背景には韓国が日本と中国の間に挟まれ、経済的に国内だけでは自立できないので海外にその生き残りの道を見出したという歴史でしょう。それは韓国の政策でもありました。それこそかつてはプロゴルファーから中東のプラントで働く韓国人まで世界に出て稼いでいたのです。その逞しさは日本でも戦前ぐらいまではあったのでしょうが、今は見る影もありません。

「日本人に英語を期待するのは無理なのか?」という問いに私は現時点では「無理」とお答えします。なぜなら英語を駆使して一生懸命海外に出て稼がねばならないということは少子高齢化が進む日本においてその可能性はほぼないからです。つまり国内で労働人口が不足するのでなんで海外にわざわざ行くのか、という話になるのです。

また最近はコマーシャルでもやっているように「翻訳機」が発達していて自国語をしゃべると相手の言語に即翻訳して音で発してくれます。とすれば相手とのコミュニケーションにおいて単純なやり取りであればあたかも通訳がいるような環境になっているのです。

ですが、あくまでもこれは「単純なやり取り」であり、一般会話や言葉の裏まで表現するのは現時点では難しいでしょう。会議や商談で使えるかといえば私は疑問です。翻訳機を介して友人ができるか、といえばほぼできないと断言します。人間関係は同じ土俵に乗った時に生まれるものであり、会話という土俵に乗れないのであれば相手の方と友人になれるわけがないのです。

日本人はこのままisolate(孤立)していくのでしょうか? 国際ビジネスマンの代表的イメージの商社マンも最近は海外で活躍している声をあまり聞きません。理由は代表者が必ずしも日本人ではなくなってきたからです。ましてやユニクロやトヨタなど海外展開している事業者の海外拠点の責任者は現地の方にしているケースが主流です。それらの会社は好きで外国人を選んでいるわけではなく、適材がいないからであります。それだけではなく、日本の上場一流企業のトップが外国人のところも数多く存在する時代です。

当地バンクーバーで私の知る20代から30代の日本の若者は頑張っています。数は少ないですが、チャレンジャーとして努力しています。私ができることはせいぜいこのような方々に手を差し伸べるぐらいなのですが、日本のプレゼンスは否が応でも下がってきてしまうのでしょう。

海外旅行に行っても寿司もラーメンも食べられなくなる日はさほど遠くないかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年11月24日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。