トランプ外交で心配なのは、中東でネタニエフ首相のジェノサイドがいっそう激化することだ。一方、ウクライナ戦争を終わらせるためには救世主になるかもしれない。
そもそも、今日の世界の混乱は、ウクライナ紛争にほとんど起因している。そのために世界経済は混乱し、アメリカとイギリスでは政権が交代し、フランス、ドイツ、日本、韓国なども半身不随だ。
ウクライナの正義は弁護士の正義だ。ウクライナは国際法に照らしていえば、正当だ。しかし、一般社会でも弁護士の正義を押し通して、実体的な妥当性を無視したら、恨みは残るし、裁判に負けた方は、なんとしても状況を覆そうとするだろう。
ロシアの西側の外縁部では、13世紀から常に、西ヨーロッパがロシア国内に同盟者を求めて、ロシア圏から引き剥がそうとし、ロシアはそれを粘り強く撃退してきた。
ドイツ騎士団をアレクサンドル・ネフスキーが、ポーランドをロマノフ王朝が、スウェーデンおよびマゼッパをピョートル大帝が、ナポレオンをアレクサンドル1世が、ヒトラーをスターリンが退けた。いま、その歴史が繰り返されているだけだ。
西側の最大の問題は、いったい、どのような未来像を描いているのか、さっぱりビジョンがないことだ。
いっそう、ロシアも欧州の一員として迎えるなら、それは一つの考え方だ。NATOとEUにロシアを迎えるのである。
ところが、西欧はそれを絶対拒否するのだ。そうして、ウクライナやジョージアまで自分たちの勢力圏にいれたがっている。そして、さらに、すこしずつ、ロシアの領土を削り取ろうとするだろう。
それでロシアが黙って眠りについてくれるはずない。しかし、それでもロシアが永久に矛を収めてくれるような和平案があるならぜひ知りたい。そんなのないだろうから、永遠に紛争は終わらないことになりそうだ。
もともとどうすべきだったかと言えば、ウクライナの中立化とロシア系住民の権利保障、クリミアの軍事基地の永久貸与と半島の事実上の割譲あたりだ。しかし、もう手遅れだ。というわけで、極めて現実的な和平案を提案してみたい。
いま問題になっているのは、①ロシアによる占領地域の扱い、②ウクライナのNATOやEUへの加盟、③ロシアへの制裁解除、④ウクライナの戦災復興だ。
どうするべきか。まず、①については、和平時の占領地域で固定するしかない。あるいは、少し、戦争の再発を避けるために、部分的には、取引をする必要はあるかもしれない。
NATOは全面的な加盟は難しい。20年間、凍結という案もあるが、そんなものロシアが呑めるはずない。私はインドとかトルコとか中立的な平和維持軍でも入れるのがいいのでないかと思う。費用は先進国がかなりを負担すればいい。
EUは正式加盟でなく将来の準加盟あたりか。そうでないと、EUに何千万も移住者が押し寄せるだけだ。そもそも、独立時に5200万人いたのが、戦争前で4000万人、いまは3000万人余り、和平になったらかえってくるのでなく、西欧にいる家族にウクライナから合流する方が多いだろう。EUなんぞに加盟したら、人口1000万人くらいしか残らない。
そして、私の提案は、ロシアへの制裁は、全面解除し、そのかわりに、戦後復興をロシアに責任を持たせることだ。ロシア制裁を続けて欧米や日本が復興の資金を出すのと、制裁を解除して、金を出さないのとどっちがいいか。わかりきった話だ。
ただ、ウクライナに貸した金をどうするかはちょっと悩ましい。
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