イスラエルがゴラン高原に侵攻しシリアに空爆:バイデン政権のレームダック化でやりたい放題?

イスラエルは、ゴラン高原を管理下に置き、アサド政権崩壊後の混乱を利用してシリア国内への侵攻を強化しています。イスラエル軍は10日、シリア国内の戦略的目標を標的に過去2日間で約480回の空爆を実施したと発表しました。ダマスカス、ラタキア、ホムスなどの都市を含む広範な地域で軍事施設や武器庫、化学兵器関連施設を攻撃し、シリアの戦略兵器の大半を破壊したとしています。

イスラエルはシリア国内に点在するイラン革命防衛隊に関連する軍事拠点に対してもミサイル攻撃を実施しました。ここぞとばかりにイランの中東での影響力を削ぐつもりのようです。

また、イスラエル軍はゴラン高原の緩衝地帯を越え、シリア南部のいくつかの村を占領したとの報道もあります。これに対し、ネタニヤフ首相は「ゴラン高原は永遠にイスラエルの一部」と主張し、停戦協定の無効を示唆しています。イスラエルの行動に対し、エジプトやサウジアラビアなどのアラブ諸国は強く非難しており、国連も領土保全の侵害に反対の立場を表明しています。

ゴラン高原の位置 Wikipediaより

現在はイスラエルにとってシリア軍が保有していた武器庫や基地を攻撃する絶好の機会となっています。これらの兵器が反体制派の手に渡る前に攻撃を行い、制圧しようという意図があるという指摘もみられます。

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アメリカはイスラエルの侵攻を支持する姿勢を見せており、この影響で地域の緊張がさらに高まっています。バイデン大統領が任期の残りを控える中、米政権のイスラエルへの影響力が弱まるレームダック状態が続いており、この間にイスラエルのネタニヤフ首相が思うままの行動を取っている状況が指摘されています。

バイデン大統領とネタニヤフ首相 2023年9月 イスラエル政府HPより

ただし、そのネタニヤフ首相の政権基盤も決して盤石なものではありません。イスラエル、アメリカ両国の内政の不安定さが国際情勢をさらに混乱させているようです。

 

一方で、シリアのでは旧反体制派による暫定政権が樹立されました。「北西部統治機構」を率いていたバシル氏が暫定政権の首相に任命されています。反政府勢力「HTS(Hay’at Tahrir al-Sham)=シリア解放機構」の指導者であるジャウラニ氏が組閣を要請したと報じられています。