いい年してタイミーで時間の切り売りしてる大人ってバカなの?と思ったときに読む話

何かと話題の新興求人アプリのタイミーですが、最近では闇バイトらしき求人が混じっていたことで波紋を呼んでいます。

【参考リンク】“スキマバイト”求人アプリの「タイミー」 新たな闇バイト対策を発表

“スキマバイト”求人アプリの「タイミー」 新たな闇バイト対策を発表
 闇バイトの疑いがある求人の掲載が指摘されたことを受け、求人アプリを運営する「タイミー」が会社側の募集情報を掲載する前にすべてをチェックするなど対策の強化を発表しました。 タイミー 小川嶺代表取締役 「不適切な案件に関して掲載されたこと自体は事実になりますし、その件については大変、重く受け止めております」  短時間...

スキマバイト求人をかき集めた結果、反社の求人まで入り込んでしまったということでしょう。

もともと単発・短期に特化した同社サービスを「単なる時間の切り売り。大人なら本業で成果を挙げることに集中すべし」と批判する向きは多いですね。

一方、雇用関連のニュースではこんなものもありました。

2024年の早期退職募集、1万人目前 電気機器が最多

2024年の早期退職募集が1万人目前 上場企業、業績悪化が追い打ち - 日本経済新聞
2024年の上場企業の早期・希望退職の募集人数が11月中旬時点で約1万人に迫る水準となったことが分かった。23年の年間と比べて約3倍の水準で、直近では新型コロナウイルス禍の影響を受けた21年の年間に次ぐ勢いで推移している。東京商工リサーチの集計によると、上場企業が24年11月15日までに募集した早期・希望退職者は53社...

過去にコロナ禍などの特殊要因がなく1万人を突破していたのは19年の1万1351人だった

話題のタイミーと企業の早期退職募集、一見すると脈絡のない個別のニュースに聞こえるかもしれませんが、実はこの2つのニュースは根っこの部分でつながっていたりします。

タイミーはどういう層にニーズがあるのか。そして今企業内で何が起きているのか。いい機会なのでまとめておきましょう。

実は日本型雇用にマッチしているタイミー

終身雇用・年功序列制度の目的とは何ですか?と聞かれたら、多少なりとも人事制度に関心のある人ならこう答えるでしょう。

「勤続年数を引き上げ、ノウハウや技術を継承させるためだろう」

教科書的にはその通りです。

でも、実はもう一つ隠された狙いもあります。それは、

「転職できないような人材に育て、組織に縛り付けるため」です。

一社しか経験させず、それも複数の職をローテーションさせることで、どんないい大学を出た人材でも「社史とか管理職の学歴卒年次には詳しいけど、これと言って芸のない中高年」に育ちます(以下“20年選手”)。

何の仕事をしてるか聞かれてるのに「〇〇株式会社で働いてます」と社名あげたり、人材紹介会社に行って「課長できます」って言っちゃうような人が典型ですね。

なんで会社はそんな人材育成するんだ、と思う人も多いでしょうが、組織にとってはとても便利な人材なんです。本人の都合なんて無視していくらでも使い倒せるから。

たとえば新人なら一ヵ月で離職するような、ど田舎に欠員が出ても、

「よし、20年選手、行ってこい」

どう考えても将来性のない不採算不人気事業に誰かを送り込まなければならないときも、

「頼んだぞ20年選手」

長時間残業が慢性化したデスマーチ職場に応援送る時も、

「それ行け20年選手」

で全て丸く収まるわけです。だって逃げないから。

最近たまに「本人の意に沿わない転勤やめます」みたいなリリース出す大企業がありますけど、あれって対象は新人とか辞められると困る優秀層ですからね。

そうじゃない人間は一応は意志確認の面談してもらっても「おまえ転勤だけど、当然意に沿うよな?」って念押しされるだけです。

終身雇用という枠組みを維持しつつ、希望に沿わない転勤は全廃、ワークライフバランス充実なんて、そんな虫のいい話あるわけないでしょ(笑)

終身雇用を維持するためには臭い飯を食ってくれる人柱が絶対に不可欠なんです。

そして、インフレの到来した今、20年選手にはさらなる魅力(本人達からすると試練)が生まれています。それは「賃金据え置きで実質賃金を下げられること」です。

まあ転勤とか汚れ仕事とかは気合いでなんとでもなるんでしょうが、実質の賃下げだけは気合いだけではどうにもならないですよね。ローンや子供の学費なんかもあるわけで。

ではどうするか。「もっと好待遇の求人に転職する」がビジネスパーソン的には王道なんでしょうが、彼らはそれが出来ません。

といって、今の職で頑張って賃上げを勝ち取ることも(年功序列制度で既に出世競争の終わっているであろう彼らには)不可能です。

そんな彼らに、空いた時間をお金に変えるという“錬金術”を提供しているのが、我らがタイミーなんですね。

実際、同社のサービス利用層を見ると、40代以上が47%、正社員属性が21%となっていて、むしろいい年の大人が主な利用層だということは明らかでしょう(画像は同社「事業計画及び成長可能性に関する事項」より)。

日本にも人材紹介会社はいくつもありますが、ああいうのは基本的に「最初から転職前提にジョブ型で育成された人材向けのサービス」なんですね。

だからイマイチ求職者に刺さらないし、引っ張り出しても面談でキャリアの棚卸とかどういう点がどういう求人にマッチしているかとか転職コンサルタントがいろいろ“下ごしらえ”しないといけないわけです。

そういう意味では、時間だけはあるけど転職力も会社との交渉力もない層を最初からターゲットにして時間の切り売りさせているタイミーは、実に日本型雇用の裏を理解しているなと言うのが筆者のスタンスです。

以降、

・早期退職募集が流行るわけ
・会社にキャリアを丸投げしてしまった人が今からなすべきこと

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Q:「20代で3社目を半年で辞めるのはアリ?」
→A:「将来的にJTCへの転職も視野に入れているのなら、次は慎重に行くべきです」

Q:「一定期間だけ主夫やフリーターというのはまずいでしょうか?」
→A:「年功序列が残っている組織は気にするでしょうね」

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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’sLabo」2024年12月12日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。