奈良に来る外国人観光客はなぜお金を使わないのか?

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奈良と言えば、京都と並ぶ古都で観光客にはお馴染みの人気エリアです。

インターネット上で見つけた今年の4月から6月のインバウンド観光客のデータを見ると、奈良県は日本の都道府県の中でインバウンド観光客数で第6位と健闘しています。

ところが、外国人1人当たりの消費額単価で見ると、奈良県は全都道府県中最下位という悲惨な結果になっています。

つまり、たくさんの外国人が訪れているのに、地元ではお金を使わずに観光をして帰ってしまう街ということです。

奈良のロケーションは京都や大阪からもとてもアクセスが良く、近鉄やJRを使って1時間足らずで出かけることができます。その結果、日帰りで帰ってしまう観光客が多く、宿泊や飲食店でのディナーに消費する人があまり多くありません。これが消費額単価を下げている原因と思われています。

また、観光客が買っていく地元のお土産も、なら漬けやそうめん位しかありません。単価が低く、たくさん購入しようと思うものではありません。

私は奈良が好きで、出かける機会が年に数回ありますが、奈良駅の近くにある日本食の名店にお邪魔するのが目的です。次回の予約を取って帰り、またその時期に奈良にやってくる。そんなサイクルで訪問しています。

いつも連泊したいと思うのですが、他に行ってみたいと思える飲食店がほとんどなく、結局翌日には帰ってしまうことになります。

お土産物店に行っても奈良の人たちは商売上手ではないと感じることがあります。買いたいものが揃っておらず、お金を使う機会が無いのです。

例えば、ビールを買うにしてもクラフトビールのIPAが欲しかったりするのですが、駅近くお店ではナショナルブランドのビールしか売っていません。もし東京ではなかなか手に入らない奈良県で作っている人気の日本酒などを販売するお店ができれば、数万円単位で購入する人が出てくるはずです。

ホテルに関しても選択肢は少なく、奈良で最も高級と思われるマリオット系のホテルも温泉は良いのですが、サービスが微妙だったりします。

このように考えると、奈良県で外国人がお金を使わないのは、京都や大阪に近くて日帰りで帰ってしまう人が多いからではなく、そもそも連泊したいと思わせるようなコンテンツが不足していることが原因だといえます。

泊まってみたいと思わせるような魅力的なホテルや、わざわざ予約を取って出かけてみたいと思えるような突き抜けたレストランがもっと増えれば、奈良に長期滞在する人も増えることでしょう。

京都とはまた違った落ち着いた雰囲気のある奈良には「伸びしろ」がまだまだたくさんあります。

戦略的なインバウンド対策をとって、外国人の1人当たり消費額最下位というどん底から早く脱出してもらいたいものです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年12月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。