厚労省が3号被保険者制度廃止を見送り:専業主婦優遇に正当性はあるのか?

厚生労働省は、年金制度改革で第3号被保険者制度の廃止を来年の法案に盛り込まない方針です。3号被保険者制度は、扶養配偶者が保険料を払わずに年金を受け取れる仕組みで、不公平感や「年収の壁」の原因として批判されています。

即時廃止は多くの人に不利益をもたらすため、本格的な議論は5年後以降となる見通しです。しかし、現行の第3号被保険者制度は、扶養されている専業主婦や一部のパート主婦が保険料を支払わずに基礎年金を受け取れる仕組みで、子どもがいない場合でも恩恵を享受できます。これが直ちに廃止されないことで、「専業主婦」にとっては引き続き有利な状況が続くと言えます。

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この決定をよかったと歓迎する感想が少なからず聞かれます。

しかし「106万円の壁」が廃止されるなどこれからパートで働く主婦は年収に関わらず手取りが約15%減るので、制度の整合性がますます取れなくなってきています。

働き控えを招く「年収の壁」の原因として批判され、日本商工会議所や連合が将来的な廃止を求めていました。

労働組合が本当に労働者のためを考えているなら、第3号被保険者制度(3号)の廃止だけを主張するのではなく、3号の社会保険料や、3号だった人の年金を減らした分を、第2号被保険者の社会保険料の引き下げに使うべきではという指摘も。

扶養控除と3号年金制度を「専業主婦優遇策」ではなく「オヤジ優遇策」と呼ぶ声もあります。ただし現役世代で3号に当てはまる人はかなり減ってきています。

妻を夫に依存させる扶養控除や第3号被保険者制度については、いずれも廃止すべきであるとの指摘があります。

厚労省の社会保障審議会年金部会の議論も錯綜していますが、ほんとうの男女同権社会に向けてまだまだ混乱は続きそうです。